老後資金に余裕があれば、子どもや孫への経済的な援助を考える人もいるでしょう。しかし、親世代が大切にしてきた家族のあり方と、子世代の価値観が一致するとは限りません。東京都内で暮らす72歳の女性は、待望の初孫が誕生し、出産祝いとして50万円を贈りました。ところが、出産直後に嫁にかけた一言をきっかけに、長男夫婦との関係が変わってしまったといいます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「産んでくれてありがとう」と言っただけなのに…初孫誕生を喜んだ〈年金月35万円・資産6,000万円〉72歳義母。出産後に息子夫婦が寄りつかなくなったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

年金月35万円、金融資産6,000万円の老夫婦

東京都内で暮らすサトコさん(72歳・仮名)は、夫(75歳)と2人暮らしです。夫は大手企業の管理職を経て定年退職。サトコさんも結婚・出産で一度は仕事を離れたものの、子育てが落ち着いてから会社員として再就職し、定年まで勤めました。

 

現在は夫婦合わせて月35万円ほどの年金を受給しています。自宅は都内の住宅地にある一戸建てで、住宅ローンは完済。預貯金や有価証券などの金融資産は約6,000万円あります。夫の実家は代々東京で土地を所有してきた家で、親族には医師や大学教授、企業経営者などもいます。サトコさんも、結婚以来、親戚づきあいや冠婚葬祭を大切にしてきました。

 

「私たちの老後は、経済的には心配していません。息子たちにも迷惑をかけないように準備してきましたし、いずれは財産も残してあげられると思っています」

 

夫妻には長男と長女がいます。長女は結婚して関西で暮らしており、長男は神奈川県内で妻と生活しています。長男夫婦はともに大手企業に勤務しており、世帯年収は約1,200万円。神奈川県内に購入したマンションで暮らしています。長男の妻は地方の一般家庭で育ち、 大学を卒業後、大手企業に就職しました。結婚後も仕事を続け、現在は育児休業中です。

 

長男は以前から、妻の自立心の強さや、自分の力でキャリアを築いてきたところを尊敬していると話していました。サトコさん夫妻も、しっかりした女性が息子の妻になってくれたと喜んでおり、嫁との関係は良好だと思っていました。

「産んでくれてありがとう」その一言がきっかけに

昨年、長男夫婦に第一子となる男の子が誕生しました。サトコさん夫妻にとっては初孫です。40歳を過ぎた長男から妊娠の報告を受けたとき、夫妻は大喜びしました。出産祝いとして50万円を用意し、将来、孫が私立学校に進学することになれば教育費を援助してもいいと話していました。

 

問題が起きたのは、出産後、サトコさんが病院に長男の妻を訪ねたときのことでした。母子ともに健康で、初めて孫の顔を見たサトコさんは、感激のあまり、こう声をかけました。

 

「本当にありがとう。元気な赤ちゃんを産んでくれてありがとう」

 

そのとき、嫁は小さく「はい」と答えたそうです。サトコさんは出産直後で疲れているのだろうと思い、特に気に留めませんでした。

 

ところが、その後、長男夫婦との関係が少しずつ変わっていきました。孫の顔を見に行きたいと連絡しても、まだ生活が落ち着かないという理由で断られます。お宮参りも、長男夫婦だけで済ませるとのことでした。サトコさんは寂しさを感じながらも、産後は何かと大変なのだろうと自分を納得させていました。しかし、孫が生後半年を迎えても状況は変わりません。

 

神奈川県内に住む長男夫婦の家までは、車で1時間ほど。決して遠い距離ではありません。それなのに、孫に会えたのは出産直後の一度だけでした。お正月も長男夫婦は自宅で過ごすことになり、孫を連れて遊びに来ることはありませんでした。サトコさん夫妻には、理由がわかりませんでした。