離婚や生活の困窮を理由に、成人した子どもが一時的に実家へ身を寄せる「出戻り」は珍しいことではありません。しかし、同居期間が一時的ではとどまらず、長期化してしまうとトラブルに発展することも。事例を見ていきましょう。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「3ヵ月って約束だったじゃない…」シングルマザーの長女、32歳で出戻り。「孫と過ごせる」と当初は母も喜ぶも、実家に20年居座った悲惨な実家の現在 (※写真はイメージです/PIXTA)

家族を壊した「長女の出戻り」

「あのとき、『少しの間だけ』という言葉を鵜呑みにせず、最初から断っていればよかったのかもしれません……」

 

地方の一戸建てで暮らす、春子さん(70代)。春子さんには、長女の夏美さん(52歳)と次女の秋江さん(48歳)の2人の娘がいます。長女の夏美さんは、32歳で離婚し幼い子どもを連れて実家へ戻ってきてからはずっと同居しています。次女の秋江さんは結婚後、実家の近所に夫と3人の子どもと住んでいます。

 

夏美さんの結婚に際し、相手方の男性が定職に就いていないことを理由に春子さんと夫は結婚に反対しました。それでも「絶対に実家には頼らない」と宣言して嫁いでいった経緯があります。しかし、32歳でシングルマザーとなり、「次のアパートが決まるまでの3ヵ月だけ置いてほしい」と泣きつかれます。当初は春子さんも「可愛い孫と過ごせるなら」と喜び、夫とともに迎え入れました。

 

ところが、3ヵ月を過ぎても夏美さんが家を出る気配はありませんでした。近所の工務店でアルバイトをしていたものの、生活費は一切入れないまま。居座りは1年、2年と延び、結果として20年という長期間におよびました。

 

この長女の居座りによって、最も大きな煽りを受けたのが、近居していた次女の秋江さん世帯でした。秋江さんはパート勤務をしながら、夫とともに3人の子どもを育てる多忙な日々を送っていましたが、実家に顔を出すたびに実家の地区行事や雑用などを押し付けてくるのです。

 

春子さん自身も親ゆえの甘さから夏美さんを庇ってしまう場面が多々あり、秋江さんからすれば「実家にタダで住み着いている姉にやらせればいいのに」と不満が募るのは当然の状況でした。孫が成人しても、実家から出る気のない夏美さん。唯一、父親だけが夏美さんを諫め、自立するよう絶えず声を掛け続けていたのです。

 

転機が訪れたのは半年前のこと。父が病気で帰らぬ人となります。その後、夏美さんが父が残した口座から現金200万円をもちだしていたことが発覚。「お父さんが頑張って貯めたお金を……」と春子さんはついに激怒しました。「お願いだからもう出ていってちょうだい」と泣きながら拒絶し、実家から追い出します。現在、夏美さんは知人の家を転々とする生活を送っているそうです。

 

しかし、時すでに遅く、壊れた家族関係が元に戻ることはありませんでした。秋江さんは「お父さんが生きていたころは我慢していたけれど、お母さんがお姉ちゃんを甘やかし続けた結果がこれでしょう」と距離を置くようになり、実家へ足を運ぶ機会は激減。

 

「孫と暮らせる」と喜んだ20年前の選択の果てに待っていたのは、夫を亡くし、長女は家を追い出され、次女世帯とも心の溝ができたまま一人残された、あまりにも寂しい実家の現在でした。