「お祝いが欲しかっただけなのかな」娘に打ち明けた寂しさ
ある日、良子さんは長女との電話で、思い切って気持ちを伝えました。
「悠斗は元気にしている? もう半年も会っていないから、ちょっと寂しくてね」
長女は「元気だよ。大学の友達と出かけたり、アルバイトを始めたりして忙しいみたい」と答えました。
悠斗さんは大学のサークルにも入り、週末はアルバイトをすることが増えていたそうです。良子さんは少し迷った後、胸の内を明かしました。
「こんなこと言いたくないけど、お祝いが欲しかっただけなのかなって、考えてしまうこともあるの」
長女は驚いた様子で、「そんなことないよ。悠斗はお母さんのこと、大好きだと思う」と返しました。
「ただ、今は友達との予定が優先になっているんじゃないかな。私だって大学生のころ、実家にあまり帰らなかったでしょう?」
言われてみれば、良子さん自身にも覚えがあります。若いころは友人と出かけるのが楽しく、親戚の集まりを断ったこともありました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、日常生活で家族や知人から頼られる内容として、「喜びや悲しみを分かち合うこと」を挙げた人が33.6%、「子や孫の世話」は26.0%でした。高齢期においても、家族との交流や役割が生活の一部になっていることがうかがえます。
良子さんも、悠斗さんが幼いころから世話をしてきた分、成長して自分の世界を広げていることに、気持ちが追いついていなかったのかもしれません。
数日後、悠斗さんからメッセージが届きました。
「おばあちゃん、なかなか会いに行けなくてごめんね。大学は楽しいよ。また時間ができたら行くね」
良子さんは、大学生活の様子を尋ねる短い返事を送りました。
「前は『いつ来るの?』って聞きたくなっていました。でも、あまり言うと負担になるかもしれませんから」
最近は、近所の友人と日帰り旅行に出かけたり、地域の料理教室に参加したりしています。
「孫に会えたらもちろんうれしいです。でも、私も自分の予定を楽しもうと思うようになりました」
次に会う約束は、まだ決まっていません。それでも、悠斗さんが大学生活を楽しんでいると聞き、良子さんは少し安心したそうです。
子どもや孫の進学、就職は、家族の付き合い方が変わるきっかけにもなります。会う頻度が減ったときには、相手の生活の変化を理解しながら、無理のない交流方法を探すことが大切です。また、家族との時間に加えて、自分自身の楽しみや人間関係を持つことも、日々の充実につながるでしょう。
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