「以前なら、何も言わなくても…」ひとり暮らしで痛感したこと
正夫さんの年金は月約19万円ですが、税金や社会保険料を差し引くと、手取りは月17万円ほどです。
家賃は5万5,000円。食費や光熱費、通信費、日用品などを合わせると、毎月の生活費は15万〜16万円になります。
離婚時に受け取った財産分与などを含め、預貯金は約1,100万円ありますが、今後の医療費や介護費用を考えると、むやみに取り崩す気にはなれません。
総務省統計局『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の1ヵ月当たりの可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円。平均で月2万9,980円の不足が生じています。
正夫さんの場合、年金収入はこの平均を上回りますが、家賃がかかるため、毎月の家計に大きな余裕があるわけではありません。
ただ正夫さんが3年目に実感したのは、金銭面の負担だけではありませんでした。
「一番大変なのは、毎日何を食べるか考えることでした」
離婚直後は、好きな総菜や弁当を買っていました。しかし、外食や出来合いの食事が続くと出費がかさみます。
自炊を始めたものの、食材を余らせたり、洗い物を翌日まで放置したりすることも珍しくありません。
「洗濯も掃除も、やらなければたまっていく。妻は毎日これをやっていたのかと思いました」
さらに、ひとりで過ごす時間の長さも気になるようになりました。
会社員時代の同僚とは年に数回会う程度。釣り仲間も高齢になり、以前ほど頻繁には出かけなくなっています。
ある日、体調を崩して数日間寝込んだときのことです。
冷蔵庫には飲み物しかなく、買い物に行く気力もありません。結局、近くに住む息子に頼んで食料品を届けてもらいました。
「息子には感謝しています。でも、以前なら妻に何も言わなくても食事が出てきた。そのことを当たり前だと思っていたんですよね」
正夫さんは、離婚前に妻から言われた言葉を思い出したそうです。
「私はずっと家の仕事をしているでしょう」
当時は大げさだと思っていました。しかし、自分で生活を回すようになって初めて、その意味が分かったといいます。
「妻は何度も助けてほしいと言っていたんです。それを聞き流していた。今なら、どうして離婚したかったのか分かる気がします」
現在、正夫さんは週に一度、地域の料理教室に通っています。そこで知り合った人たちと食事をすることも増えました。
元妻とは必要な連絡を取る程度で、復縁を望んでいるわけではありません。
「今さら妻に戻ってきてほしいとは言えません。ただ、もっと早く家のことを一緒にやっていれば、違う結果になったのかなとは思います」
離婚後の生活では、家計管理や家事、人付き合いなど、それまで夫婦で担っていたことを一人で引き受ける必要があります。
定年によって生活の時間配分が変わるときこそ、家事の分担や互いの希望を確認しておくことが大切です。日々の小さな負担や不満を放置せず、夫婦で話し合う機会を持つことが、その後の暮らしにも影響するでしょう。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

