「もう一緒に暮らしたくない」定年後、妻から告げられた離婚
72歳の正夫さん(仮名)は、地方都市の賃貸マンションで一人暮らしをしています。
69歳のときに、40年以上連れ添った妻と離婚しました。
正夫さんは大手メーカーに勤め、60歳で定年退職。その後も再雇用で65歳まで働き、退職後は趣味の釣りや読書を楽しんでいました。
「仕事を辞めたら、ようやく自由な時間ができると思っていました。妻と旅行に行くのもいいなと考えていたんです」
しかし、妻の気持ちは違っていたようです。
退職後、正夫さんは家で過ごす時間が増えましたが、家事はほとんど妻に任せきりでした。
朝食を食べ終えると新聞を読み、昼になると「ご飯は?」と尋ねる。夕食後も食器を下げず、テレビを見て過ごすのが日課だったといいます。
「家事は妻のほうが慣れているし、今さら自分が手を出す必要もないと思っていたんです」
妻から「少しは自分でやって」と言われることもありましたが、正夫さんは「分かったよ」と答えるだけで、生活を変えようとはしませんでした。
そんな日々が数年続いたある日、妻から離婚を切り出されます。
「もう一緒に暮らしたくない。これからは自分のために時間を使いたいの」
正夫さんは耳を疑いました。
「今さら離婚なんて、どうしてだ?」
すると妻は、静かに答えたそうです。
「あなたは会社を辞めたけれど、私はずっと家の仕事をしているでしょう。これから先も、同じ生活を続けるのは嫌なの」
正夫さんは、家事を分担すると約束しました。しかし、妻の決意は変わりませんでした。
「何度もお願いしてきたのに、変わらなかったでしょう。もう十分よ」
その後夫婦は話し合いを重ね、69歳で協議離婚が成立しました。自宅は妻が住み続けることになり、正夫さんは預貯金などの財産分与を受けて、近くの賃貸マンションへ移りました。
離婚後の年金収入は月約19万円。婚姻期間中の厚生年金記録については、離婚時の年金分割の手続きを済ませています。
「最初は腹も立ちました。でも別々に暮らし始めると、誰にも気を使わずに済むのが気楽でね」
好きな時間に起き、好きなものを食べる。正夫さんは、そんな生活をしばらく楽しんでいました。
ところがひとり暮らしが3年目に入ったころ、少しずつ気持ちが変わっていったといいます。
