(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、日々の買い物や通院のしやすさに加え、離れて暮らす子どもとの距離も住まい選びの重要な要素になります。子どもの近くに引っ越したいと思っても、同居には抵抗があるという人もいるでしょう。親子それぞれの生活を大切にしながら、必要なときには助け合える場所を選ぶ。そんな考えから、長年暮らした自宅を手放す夫婦もいます。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

夫婦が電車で20分の街を選んだ理由

夫婦が最終的に選んだのは、美紀さんの最寄り駅から電車で約20分の場所にある中古マンションでした。

 

駅から徒歩7分で、スーパーや内科の診療所も徒歩圏内。築18年の2LDKで、エレベーターもあります。

 

以前の一戸建ては約2,700万円で売却し、マンションは諸費用を含めて約3,100万円で購入しました。差額の約400万円は預貯金から支払っています。

 

購入後も夫婦の手元には約1,600万円の預貯金が残りました。

 

「年金の範囲で生活できる見込みですし、家の維持費も計算しました。これなら無理なく暮らせると思ったんです」

 

もっとも、マンションには毎月約3万5,000円の管理費・修繕積立金がかかります。固定資産税も必要になるため、夫婦は住み替え前に年間の住居費を確認したそうです。

 

美紀さんは、両親が自宅から離れた場所を選んだことを不思議に思ったといいます。

 

「もっと近くでもよかったのに。何かあったとき、すぐ行けるほうが安心じゃない?」

 

すると和子さんは、こう答えました。

 

「近すぎると、あなたも私たちも、つい頼りすぎちゃうかもしれないでしょう」

 

夫婦が気にしていたのは、娘の生活に負担をかけることでした。

 

近所に住めば、ちょっとした買い物や家事を頼む機会が増えるかもしれません。反対に、娘から孫の送迎や留守番を頼まれることも考えられます。

 

「娘の役に立てるのはうれしいけれど、毎日の予定までお互いに気にするようにはなりたくなかったんです」

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、子どもがいる65歳以上の人のうち、「同居ではなく近居したい」と回答した割合は32.8%。「同居したい、同居を続けたい」は23.2%でした。

 

また、同居または近居を希望する人にメリットを尋ねたところ、「ちょっとした手助けが必要な場合に安心して過ごせる」が88.7%に上っています。

 

正彦さん夫婦も、いざというときに娘を頼れる安心感は大切にしています。

 

引っ越してからは、月に1〜2回ほど美紀さん一家と食事をするようになりました。

 

普段は夫婦で散歩をしたり、近所の図書館に出かけたりして過ごしています。買い物も徒歩で済ませられるようになり、以前より外出が増えたそうです。

 

「娘の家から電車で20分。それがちょうどいいんです」

 

もちろん、今後どちらかが介護を必要とするようになれば、現在の暮らし方を見直す可能性もあります。その際は、介護サービスの利用を含めて家族で相談するつもりです。

 

高齢期の住み替えでは、子どもとの距離に加え、交通の便や医療機関へのアクセス、住宅の維持費など、検討すべきことが数多くあります。親子がそれぞれの生活を続けながら、必要なときに協力できる環境を整えることも、住まい選びの一つの考え方でしょう。

 

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