夫婦が電車で20分の街を選んだ理由
夫婦が最終的に選んだのは、美紀さんの最寄り駅から電車で約20分の場所にある中古マンションでした。
駅から徒歩7分で、スーパーや内科の診療所も徒歩圏内。築18年の2LDKで、エレベーターもあります。
以前の一戸建ては約2,700万円で売却し、マンションは諸費用を含めて約3,100万円で購入しました。差額の約400万円は預貯金から支払っています。
購入後も夫婦の手元には約1,600万円の預貯金が残りました。
「年金の範囲で生活できる見込みですし、家の維持費も計算しました。これなら無理なく暮らせると思ったんです」
もっとも、マンションには毎月約3万5,000円の管理費・修繕積立金がかかります。固定資産税も必要になるため、夫婦は住み替え前に年間の住居費を確認したそうです。
美紀さんは、両親が自宅から離れた場所を選んだことを不思議に思ったといいます。
「もっと近くでもよかったのに。何かあったとき、すぐ行けるほうが安心じゃない?」
すると和子さんは、こう答えました。
「近すぎると、あなたも私たちも、つい頼りすぎちゃうかもしれないでしょう」
夫婦が気にしていたのは、娘の生活に負担をかけることでした。
近所に住めば、ちょっとした買い物や家事を頼む機会が増えるかもしれません。反対に、娘から孫の送迎や留守番を頼まれることも考えられます。
「娘の役に立てるのはうれしいけれど、毎日の予定までお互いに気にするようにはなりたくなかったんです」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、子どもがいる65歳以上の人のうち、「同居ではなく近居したい」と回答した割合は32.8%。「同居したい、同居を続けたい」は23.2%でした。
また、同居または近居を希望する人にメリットを尋ねたところ、「ちょっとした手助けが必要な場合に安心して過ごせる」が88.7%に上っています。
正彦さん夫婦も、いざというときに娘を頼れる安心感は大切にしています。
引っ越してからは、月に1〜2回ほど美紀さん一家と食事をするようになりました。
普段は夫婦で散歩をしたり、近所の図書館に出かけたりして過ごしています。買い物も徒歩で済ませられるようになり、以前より外出が増えたそうです。
「娘の家から電車で20分。それがちょうどいいんです」
もちろん、今後どちらかが介護を必要とするようになれば、現在の暮らし方を見直す可能性もあります。その際は、介護サービスの利用を含めて家族で相談するつもりです。
高齢期の住み替えでは、子どもとの距離に加え、交通の便や医療機関へのアクセス、住宅の維持費など、検討すべきことが数多くあります。親子がそれぞれの生活を続けながら、必要なときに協力できる環境を整えることも、住まい選びの一つの考え方でしょう。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

