「そういう問題じゃないんだよ」きっかけは孫へのプレゼント
その日、弘子さんは孫たちを連れてショッピングセンターへ出かけました。
長女が欲しがっていたゲームソフトを見つけ、誕生日が近いこともあって購入したのです。「お父さんとお母さんに聞いてからにしようね」と一度は伝えたものの、孫に何度も頼まれ、結局その場で買ってしまいました。
ところがそのゲームは、健一さん夫婦が、利用時間などの約束を決めてから買うつもりだったものでした。
迎えに来た健一さんは、ゲームを見て表情を変えました。
「お母さん、勝手に買わないでって前にも言ったよね」
弘子さんは、思わず言い返してしまいました。
「せっかく買ってあげたのに。そんなに怒らなくてもいいでしょう」
「そういう問題じゃないんだよ」
健一さんはそれ以上話さず、子どもたちを連れて帰っていきました。その夜に届いたのが、冒頭のLINEでした。
「何度お願いしても、僕たちの決めたことを守ってもらえない。しばらく子どもたちは預けられない。もう孫には会わせられない」
弘子さんは、何度も文章を読み返したそうです。
「私たちは、息子たちの役に立っていると思っていたんです。そんなに嫌がられていたなんて……」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、65歳以上の人のうち、子どもと「同居したい、同居を続けたい」と回答した割合は23.2%、「同居ではなく近居したい」は32.8%でした。親子がどの程度の距離で暮らしたいと考えるかにも、さまざまな希望があることが分かります。
LINEを受け取ってから数日後、弘子さんは健一さんに電話をかけました。
「今まで預かってあげていたのに、そんな言い方はないんじゃない?」
すると、健一さんは静かに答えました。
「助かっていたのは本当だよ。でも預かってもらっているから、ずっと我慢していたんだ」
弘子さんは返事ができませんでした。
「子どもたちには、僕たちが決めたルールがある。それを守ってもらえないなら、安心して預けられないんだよ」
信一さんも、妻から事情を聞いて考え込んだといいます。
「俺たちは孫が喜ぶことばかり考えていたけど、健一たちの考えも聞くべきだったんじゃないか」
弘子さんは息子に謝り、今後は夫婦の決めたことを尊重すると伝えました。健一さんからは「少し時間がほしい」と返事があり、それ以降、毎週末の預かりはなくなっています。
以前は孫たちの声でにぎやかだった土曜日。今は夫婦2人で過ごすことが増えました。
「孫に会えないのは寂しいです。でも、まずは息子たちに安心してもらわないといけないんでしょうね」
弘子さんは次に会える日を待ちながら、これまでの接し方を振り返っています。
祖父母が孫の世話を引き受ける際には、食事や買い物、生活習慣について、親の方針を事前に確認しておくことが大切です。気になることがあれば、孫の前で判断せず、親と相談する必要もあるでしょう。
家族間の協力を長く続けるためには、日ごろから互いの希望を伝え、無理や不満をため込まない関係を築いていくことが求められます。
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