※写真はイメージです/PIXTA
「家にいるだけ邪魔」仕事一筋だった52歳父
日曜日の朝、午前8時を過ぎても、高橋大輔さん(52歳・仮名)は布団から出ませんでした。前日の夜、妻の智子さん(50歳・仮名)と娘の陽菜さん(20歳・仮名)が話しているのを聞いたからです。
「お父さん、明日も家にいるの?」
娘がそう聞くと、智子さんは「たぶんね」と答えました。すると陽菜さんが、「家にいるだけ邪魔じゃない?」と笑ったのです。智子さんも否定せず、「まあ、そうかもね」と答えました。2人の会話を聞いた大輔さんは、何も言わず自室に戻ったそうです。
大手メーカーで働く大輔さん。年収は約880万円。20代で入社して以来、仕事を優先してきました。平日は朝7時前に家を出て、帰宅は夜9時を過ぎることが多い。休日も会社から連絡が入れば対応します。
家族からすれば、大輔さんが家にいないことは当たり前でした。ところが1年ほど前から勤務先で在宅勤務が増えました。以前なら会社にいる時間帯に、大輔さんが自宅にいる。昼休みにリビングへ出てくることもあります。すると、智子さんから「そこで仕事するなら、自分の部屋でやって」と言われるようになりました。陽菜さんにも「オンライン会議、声大きいよ」と注意されます。
大輔さんには、なぜ自分が邪魔扱いされるのか分かりませんでした。
内閣府『令和8年版男女共同参画白書』によると、男性は仕事中心の生活になりやすく、特に50代男性において仕事の多忙さや社会的孤立、家庭・地域での居場所の少なさが指摘されています。
また50代男性の18.2%が「不安や悩みの相談相手がいない」(男性全体では13.6%)、17.1%が「困った時に頼れる人がいない」(男性全体では11.8%)と回答しており、いずれも同年代の女性や男性全体と比べて高い割合となっています。また、男性では「仕事が忙しくて時間がない」と感じる割合が2割超(50代男性で22.9%)。長年の仕事優先の生活によって、仕事以外の普段の暮らしの中で「自分の役割や居場所」を見出しにくい実態が浮き彫りになっています。
大輔さんは、長く働くことを問題だと思ったことはありませんでした。住宅ローンを払い、娘の大学費用を払う。生活費を稼ぐ。そのために仕事を頑張る、家族のために頑張る。家にいない時間が長くても、家族に不自由させなければ問題ないと思っていました。
ところが、在宅勤務によって、その考え方が揺らぎました。
ある日の昼、大輔さんがリビングで昼食を取っていると、智子さんが言いました。
「お昼、どうするの?」
「何か作ってくれるんじゃないの?」
「私はあなたの昼ご飯を作るために家にいるわけじゃないよ」
