(※写真はイメージです/PIXTA)
順風満帆だった地方移住生活
「これからは静かな田舎で、家庭菜園でもやりながらのんびり暮らしたいんだ」
15年前、当時65歳の父・トシヤさんと母・トクコさんから地方移住の計画を聞かされたとき、娘のマナミさん(当時36歳)は少し心配しつつも、二人の第二の人生を応援することにしました。
両親が移住先に選んだのは、都心から新幹線とローカル線を乗り継いで3時間ほどの自然豊かな山あいの町。広い庭つきの中古一戸建てを購入し、移住後は「野菜が美味しく育った」「空気が綺麗で毎日が楽しい」「ご近所も同世代が多くて気が合う」と、両親からの電話も弾んでいました。トシヤさん夫婦の2人合わせた年金収入は月24万円あり、悠々自適のセカンドライフを満喫しているように見えます。
マナミさんも、両親が移住するまで義実家も実家も都内だったため、自分の子どもたちの夏休みに子どもを連れて両親のもとへ遊びにいくことができ、子どもたちに自然に触れ合う機会を持たせることができたと喜びました。ときには家庭菜園で採れた大量の野菜を送ってもらい、「お父さんとお母さんは、本当に地方移住してよかったな」と思っていたのです。
15年後の緊急SOS
ところが、両親が80歳を迎えた今年、事態は急変します。ここ2年、子どもたちの高校受験と大学受験が立て続けにあり、両親の移住先へは訪れることができないでいたタイミングでのことです。平日昼間、仕事中のマナミさんのスマホにトクコさんから震える声で電話が入りました。
「マナミ、お願い……助けて! お父さんが……もうどうしていいかわからないの!」
パニックになる母をなんとか宥め、マナミさんは会社に頭を下げて新幹線に飛び乗り、両親の家へ急行。駆けつけたマナミさんが目にしたのは、衝撃の光景でした。
荒れ果てて雑草が鬱蒼と茂る庭。玄関を開けると、足の踏み場もないほど積み上がった通販のダンボールとゴミの山。そして居間には、真夏だというのにエアコンもつけず、ボロボロの布団に横たわる痩せこけた父・トシヤさんの姿がありました。
実は2年前、トシヤさんが車の運転免許を自主返納したことで生活が一変していたのです。最寄りのスーパーや病院まで車で20分かかる立地だったため、一気に買い物が困難になり、日用品や食料品を通販に頼るようになりました。しかし、徐々に認知機能が低下したトシヤさんは同じものを大量に注文して放置。さらに、屋根の雨漏りやボイラーの故障が発生したものの、修繕費を出す余裕がなくなり、壊れたまま放置されていたのです。
月24万円の年金で十分暮らせていたはずが、日用品や食料品を通販にしたことによる生活費がかさみ、自家用車の維持費や家屋の老朽化による突発的な修繕費が追い打ちをかけ、蓄えは底をついていました。近所の方も、トシヤさんたちとともに高齢化しているため、頼ることもできず、夫婦共倒れ寸前まで追い詰められていたのです。
「こんなことになるなら、都心近くに住み続けてもらえばよかった……」
衰弱した両親を前に、マナミさんは呆然と立ち尽くすしかありませんでした。