かつて「一生安泰」の代名詞だった公務員。しかし高額住宅ローンや教育費、物価高が重なり、家計窮迫に苦しむ世帯が増えています。高い給与水準の裏で、なぜ生活が破綻寸前に追い込まれるのでしょうか。ある事例から、一見恵まれた公務員世帯が直面する家計の厳しいリアルと老後リスクに迫ります。
「公務員と結婚すれば安泰」は嘘でした…〈手取り41万円・53歳国家公務員〉に向けられた妻の怒号。〈6,000万円マンション・フルローン購入〉の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

エリートの陰に隠れた50代国家公務員の家計窮迫

世間からは「安定した高給取り」と見られがちな国家公務員ですが、その現場では過酷な生活苦が広がっています。中央省庁の地方支分部局に勤務する斉藤哲也さん(53歳・仮名)も、理想と現実のギャップに苦しむ一人です。

 

斉藤さんは大学卒業後、行政職として国家公務員の道を歩んできました。勤続30年を超え、現在は課長補佐級の役職に就いています。

 

斉藤さんの月額給与は各種手当を含めて額面で約54万円です。人事院が公表した「令和8年国家公務員給与等実態調査」において、斉藤さんが適用される「行政職俸給表(一)」の大学卒・52歳以上56歳未満における平均給与月額は546,143円であり、斉藤さんも同等の水準にあります。

 

一見すると十分な収入ですが、税金や社会保険料が控除された後の手取り額は毎月約41万円です。この手取りに対し、斉藤家の家計は限界を超えていました。原因は、13年前の40歳時に購入した6,000万円の分譲マンションです。

 

当時、周囲の同僚も次々とマイホームを購入していました。不動産会社の営業マンからは、「公務員ならフルローンもいけますよ」と言われ、妻の直美さん(51歳・仮名)からも「ちょっと背伸びしても資産になるマンションを買いましょうよ」と強く背中を押されました。公務員の社会的信用は絶大で、金融機関の住宅ローン審査も満額で難なく通過しました。

 

現在、住宅ローンの返済額は毎月18万円に上ります。さらに昨今、マンションの管理費と修繕積立金が大幅に値上げされ、月額4万円に跳ね上がりました。住宅関連費だけで毎月22万円が消えていきます。

 

そこに、大学3年生の長男の学費と仕送りが月10万円、高校3年生の次男の塾代が月6万円重くのしかかります。食費や光熱水費など基本生活費を合わせると、毎月の赤字は10万円ほど。直美さんのパート代を合わせても、月2万~3万円ほど足りず、夏冬のボーナスを切り崩して補填する自転車操業が続いています。

 

「貸してくれると、返せるのは、まったく違うのに……浅はかでした。妻も周囲の目を気にして見栄を張ってしまった。冷静な資金計画なんてありませんでした」

 

斉藤さんはそう振り返ります。