(※写真はイメージです/PIXTA)
マイホームを手放しサ高住へ住み替え…絶句した理由
この10年間、思い描いていた理想を叶えた裏側で出費も重なっていました。敷地の雑草対策や建物の修繕、固定資産税に加え、60代半ばには双方の親の介護費用も発生し、手元の蓄えを着実に取り崩していたのです。
「このままここで暮らし続けるのは限界かもしれない」
子どもたちからの助言もあり、夫婦は住み替えを決意しました。家を売却した資金を充てて、駅近くのバリアフリーに配慮されたサービス付き高齢者向け住宅へ移り住もうと考えたのです。
ところが、複数の不動産業者に査定を依頼したヨシマサさんは、提示された数字を見て言葉を失いました。不動産の担当者はこう説明したのです。
「アクセスがいい都市部とは異なり、公共交通の便が悪い郊外の戸建て物件は、需要が乏しく価格が維持しにくいのが現状です。また、こちらの敷地には古い大がかりな擁壁(ようへき)がありますが、いまの安全基準を満たしておらず、かなり老朽化が進んでいます。買い手を付けるには、解体費や庭の整地だけでなく、この擁壁の補修ややり替え工事に数百万円単位の費用がかかります。土地自体の査定額とこれらの施工費用が相殺され、お客様の手元に残る売却額はほぼ0円です。もしかすると、10年前の購入時点でも、相場よりかなり高値で契約されていた可能性があります」
仮にこの10年間を賃貸で暮らしていれば、いくらか家賃を支払っていたとしても、手元には1,000万円以上の退職金が「いつでも動かせる現金」として残っていたはずでした。その資金さえあれば、サ高住への入居一時金も捻出でき、将来の医療や介護への備えも整えられたかもしれません。
不動産の知識がなかったばかりに、購入当初から隠れた欠陥リスクごと相場以上の高値で掴まされていた――。10年前に2,300万円もの退職金を投じて購入した「終の棲家」は、売却しても一銭の現金にもならない負の遺産と化していました。
確かに賃貸暮らしであれば、毎月一定の家賃支出は発生します。しかし、それ以上に「手元にまとまった現金を残せる」という大きな強みがありました。手元に資金さえあれば、高齢になって体調が変わった際にも、サ高住への入居一時金に充てたり医療費に回したりと、状況に合わせて柔軟に生活を組み替える融通が利いたはずだったのです。
持ち家を購入したばかりに手元の流動資金は固定化され、いまやサ高住へ移るための元手すら捻出できません。2,300万円の退職金は、消え去ってしまいました。
ヨシマサさんは、「高値で買わされ、挙句の果てに手元には1円も残らないなんて……。終の棲家にすることもできず、資産にもならず。こんなことならマイホームにこだわらず、賃貸にしておけばよかった」と後悔に震えずにはいられませんでした。