総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、「介護・看護」を理由に前職を離れた人は年間10万人を超え、その約4分の3を女性が占めています。家族の療養と仕事の両立は、決して簡単ではありません。年収900万円の管理職として働くユカさん(48歳・仮名)も、夫の療養をきっかけに夫婦関係への違和感を募らせていきました。
なんで返事くれないの?療養中の52歳夫から止まらないLINE…〈年収900万円・48歳妻〉の頭に「離婚」がよぎったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

夫の療養で変わった日常

東京都内に暮らすユカさん(48歳・仮名)は、企業で管理職として働いています。年収は約900万円。夫のマサトさん(52歳・仮名)も会社員で、年収は約700万円です。子どもはいません。

 

結婚して20年近く。共働きで、お互い忙しく働きながらも、休日には外食や旅行を楽しんでいました。そんな生活が変わったのは、マサトさんが体調を崩したことがきっかけです。

 

検査や治療を経て、数ヵ月間、自宅療養することになりました。幸い命にかかわる状態ではなく、回復も見込まれていました。

 

「もちろん心配でした。病院にも付き添いましたし、食事や薬のこともできる限りやりました」

 

ところが、自宅療養が始まってしばらくすると、別の問題が起こり始めます。

「今日何時に帰る?」仕事中も止まらない連絡

ユカさんが出社すると、午前中から夫のLINEが届きます。

 

「今日、何時に帰ってくる?」

「お昼、何を食べればいい?」

「薬って食後だったっけ?」

 

最初は、その都度返信していました。

 

しかし、やがて会議中にもスマートフォンが何度も震えるようになります。返信できないでいると、「LINE見た?」。さらに着信まで。

 

「何かあったのかと思って、会議を抜けて折り返したこともありました」

 

ところが、

「別に。ちょっと話したかっただけ」

と言われることもありました。

 

夫は療養中で心細いのだろう。そう考え、ユカさんは苛立ちを飲み込みます。

 

「具合が悪い人に『連絡しないで』と言ったら、自分がすごく冷たい人間みたいな気がしてしまって」

「私は仕事が好きなんです」

マサトさんの休職によって、世帯収入は減りました。

 

一定の要件を満たす会社員などは、病気やケガで働けなくなった場合に「傷病手当金」を受け取れることがあります。ただ、ユカさんが仕事を続けたい理由は、家計だけではありませんでした。

 

「私の収入だけでも生活はできます。子どももいませんから。でも、それ以上に私は仕事が好きなんです」

 

長年積み重ねてきたキャリアがあり、管理職として責任のある仕事を任されることにも、やりがいを感じていました。

 

ところがある日、帰宅が遅くなったユカさんに、夫は言いました。

 

「俺がこんな状態なのに、仕事のほうが大事なの?」

 

「仕事と夫を比べているわけじゃないんです。でも、夫が病気になった瞬間に、私の仕事だけが『減らして当然のもの』になるのかなと思いました」

 

そして、決定的な出来事が起こります。

 

重要な会議中、夫から何度も電話がかかってきました。

 

休憩時間に慌てて折り返すと、

「別に。ちょっと話したかっただけ」

 

ユカさんは思わず、

「急ぎじゃないなら、仕事中に何回も電話しないでよ」

と言いました。

 

すると夫は、「冷たくない? 俺のこと、心配じゃないの?」

 

その瞬間、ユカさんのなかで何かが切れました。

 

「心配してないわけないじゃん!」

 

病院にも付き添った。食事も用意した。仕事中にも連絡を返してきた。

 

それでも夫にとっては「足りない」。

 

「一気に疲れてしまったんです」