明確な不満はないものの、年齢やお金、将来への不安から転職について悩む日々を送る人は多いでしょう。現職にとどまる決意も、転職する覚悟も固まらない「キャリアの停滞感」から抜け出すにはどうすべきか。吉田直実氏の著書『中間管理職の生存戦略 自分の「思い込み」に気づき最適解を見つける本』(ごきげんビジネス出版)より、今すぐ辞めたいわけではないが現状に迷う人へ向けて、転職か残留かの判断軸を紐解きます。
「今すぐ辞めたいほどではないが…」求人サイトを眺めては閉じる人のモヤモヤ。“文句”は出ても“退職届”は出せない人の共通点 (※写真はイメージです/PIXTA)

転職はいつでもできる…後悔しない答えの出し方

5.「仮説検証型」を選択するのはどうでしょうか。転職か残留かで迷っているとき、多くの場合「情報不足」と「思い込み」が混ざっています。頭の中だけで考え続けても、モヤモヤが濃くなるだけで、結論には近づきません。そこ
で一度、「転職は保留しつつ、残る前提でできることをすべてやり切る」というスタンスを取ります。なぜなら、辞めることはいつでもできるからです。

 

具体的にやることとして、「今の会社で何が一番ストレスなのか」を3つに絞って書き出します。そのうえで、それぞれについて「自分で変えられること」「相談すれば変えられること」「自分には変えられないこと」に分けます。変えられる可能性があるものについては、上司への相談、業務の優先順位の見直し、任せ方・断り方の工夫など、具体的な打ち手を3つずつ考え、実際に試してみましょう。

 

同時に、社外の情報も取りに行きます。転職サイトに登録する、エージェントと面談する、信頼できる元同僚に話を聞くなどして、「もし今動いたら、どの程度の選択肢があるか」の感覚をもちます。これは、すぐに転職するためではなく、「自分にはほかの選択肢もある」という心理的な余裕をつくるためです。

 

「残る前提の打ち手」を3〜6か月ほど試したうえで、あらためて「自分が変われば続けられるのか」「構造的に合わないのか」を自分に問い直します。やれることをやり切ってから出した答えであれば、どちらを選んでも後悔は少なくなります。

「どの会社にいるか」より「どんな状態で働きたいか」

「キャリア」とは、なんでしょうか。それは「会社に何年勤めたか」ではなく、「自分で選び取った経験の軌跡」のことではないかと思うのです。

 

では「転職」とは、なんでしょうか。それは「今の不満から逃げること」ではなく、「自分の働き方の前提を組み替える1つの手段」にすぎないのではないかと思うのです。

 

私たちは「ここにいたほうが得か」という発想になりがちです。しかし、「得」かどうかは未来のことだから、完全にはわかりません。わからないものを「完璧に」しようとして、延々と情報を集め、シミュレーションを繰り返し、結果として動けなくなってしまいます。これは「完璧な選択をしたい」という思い込みです。

 

もうひとつの思い込みは、「今までここでがんばってきたのだから、辞めるのはもったいない」という感情です。投資した時間や努力に縛られて、「これまで」を守ることにエネルギーを使ってしまう。しかし、本当に大事なのは「これまで」ではなく、「これからの人生をどう生きたいか」です。

 

ここで少し視点を変えてみましょう。大切なのは、「どの会社にいるか」よりも、「どんな状態の自分で働いていたいか」です。成長している感覚があるか。自分の大事にしたい価値観が踏みにじられていないか。家族や大切な人との時間をどう確保したいか。会社の名前や他人の評価よりも、「自分が納得できる選択」を積み重ねることが、結果として素晴らしいキャリアとなるのではないでしょうか。

 

今一度、自らに問い直したい。自分は「どの会社にいるか」ばかりを気にしていないか。「どんな自分で、どんな日常を送りたいのか」という問いから、キャリアを考え直してみてもよいのではないでしょうか。

 

 

吉田 直実

なおみ税理士事務所 代表

元国税職員/一般社団法人日本推進カウンセラー協会認定 認知行動療法士

 

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