2020年に「パワハラ防止法」が施行されて以降、社会においてハラスメントへの感度が高まりました。部下を指導する立場にある上司としては、「この言い方は大丈夫だろうか」「どこまで踏み込むとパワハラになるのか」と不安を抱え、必要な指導に踏み切れず委縮してしまう場面も少なくないでしょう。とはいえ、部下に指導しなければならない場面は必ず訪れます。本記事では、吉田直実氏の著書『中間管理職の生存戦略 自分の「思い込み」に気づき最適解を見つける本』(ごきげんビジネス出版)より、指導時に上司が気をつけたいポイントをみていきましょう。
部下に「パワハラ」と言われるのが怖いので、何も言えません…「沈黙する上司」が知らずにやってしまう〈新たなハラスメント〉の罠 (※写真はイメージです/PIXTA)

どこまでが「指導」で、どこからが「パワハラ」か

パワハラ研修やパワハラに関するニュースを目にする中で、「自分の指導も、いつかパワハラと言われるのではないか」と、不安を抱える管理職は少なくありません。

 

部下の成長のために厳しく伝えたい場面でも、「この一言は大丈夫だろうか」「強めに言って、録音されていたらどうしよう」などと頭をよぎり、結局やんわりとしか言えない。結果として、部下の行動は変わらず、チームの成果も伸びない。

 

一方で、部下側の感度も高まり、「注意された=ハラスメント」と感じる人もいます。上司としては「業務上必要な指導だった」と思っていても、受け手が「人格否定された」「萎縮した」と感じれば、関係性は簡単に壊れてしまいます。

 

どこまでが指導で、どこからがパワハラなのか。その線引きは状況や関係性によっても揺れ動き、マニュアルどおりにはいきません。だからこそ、「どう言えば安全か」「どこまで踏み込んでいいか」に悩み続ける。なかなか解決策の見えにくい厄介なテーマといえるでしょう。さあ、あなたなら、どうする!?

パワハラと取られない指導方法、「5つ」の対策

1.評価基準と期待をあらかじめ明文化する(ルール整備型)

メリット:何を求めているかが明確になり、指導の根拠が説明しやすくなる。

デメリット:運用がなおざりになると、単なる「紙のルール」になる。

注意点:行動レベルの具体例まで落として共有することが必要となる。

 

2.事実と行動にのみ焦点を当てて伝える(ロジカル型)

メリット:人格攻撃になりにくく、言った・言わないの争いを避けやすくなる。

デメリット:冷たく感じられ、感情面のフォローが不足しやすくなる。

注意点:「私はこう受け取った」という自分の主観と、客観的事実を区別して話す。

 

3.質問中心で本人の考えと意思を引き出す(コーチング型)

メリット:押しつけではなく、「一緒に考えている」という感覚をもってもらえる。

デメリット:時間がかかり、短期的な成果を求める場面ではもどかしい。

注意点:問いかけたあとは、相手の沈黙を遮らず、答えを急がないようにする。

 

4.信頼関係を日常的に築く(関係基盤型)

メリット:信頼関係があると、注意が受け入れられやすくなる。

デメリット:信頼関係が構築できるまでは時間がかかる。

注意点:日頃の雑談や共感、小さな承認を怠らないようにする。

 

5.人事・コンプライアンス部門や先輩上司に相談する(セーフティネット型)

メリット:自分の指導が客観的にどう見えるかを確認できる。

デメリット:相談のハードルが高く、つい自己判断で済ませてしまう。

注意点:「事前相談」も活用し、グレーな案件はひとりで抱え込まないようにする。