2020年に「パワハラ防止法」が施行されて以降、社会においてハラスメントへの感度が高まりました。部下を指導する立場にある上司としては、「この言い方は大丈夫だろうか」「どこまで踏み込むとパワハラになるのか」と不安を抱え、必要な指導に踏み切れず委縮してしまう場面も少なくないでしょう。とはいえ、部下に指導しなければならない場面は必ず訪れます。本記事では、吉田直実氏の著書『中間管理職の生存戦略 自分の「思い込み」に気づき最適解を見つける本』(ごきげんビジネス出版)より、指導時に上司が気をつけたいポイントをみていきましょう。
部下に「パワハラ」と言われるのが怖いので、何も言えません…「沈黙する上司」が知らずにやってしまう〈新たなハラスメント〉の罠 (※写真はイメージです/PIXTA)

1回の言葉だけで決まるわけではないパワハラ

2.「ロジカル型」と4.「関係基盤型」を組み合わせてみるのはどうでしょうか。前提として、「指導がパワハラと受け取られるかどうか」は、その1回の言葉だけで決まるのではなく、「日頃どんな関係を築いているか」に大きく左右されます。

 

そのため、いざ注意が必要になったときだけ厳しく登場するのではなく、普段から雑談をしたり、「あの対応よかったね」と承認したりして、「この上司は自分を見てくれている」という感覚を育てておきます。これが4.「関係基盤型」の土台づくりです。

 

そのうえで、実際に指導するときは2.「ロジカル型」の視点を徹底します。「なんでいつもそうなんだ」「やる気がないんじゃないか」といった人格や性格へのラベリングではなく、「〇月〇日の会議で、先方が説明してくれているときにスマホを見ていたよね」「事前に共有した資料のこの部分の修正がされていなかったよ」というように、「いつ・どこで・どんな行動があったか」の事実だけを、できるだけ具体的に伝えましょう。

 

さらに、「私はその場でこう感じた」「お客さまにはこう映ったと思う」と、自分の受け取りも丁寧に言語化します。そのあとすぐに正解を押しつけるのではなく、「あなた自身はどう思ったか」「次に同じ場面があったら、どうしてみたいか」と、相手の考えを聞きます。このとき、普段から信頼貯金ができていれば、多少耳の痛いフィードバックでも、「自分の成長のために言ってくれている」と受け取りやすくなるでしょう。

 

最後に、「もし、きょうの伝え方で気になったところがあれば教えてほしい」と一言添え、指導の仕方についても開かれた姿勢を見せます。これにより、「上司に意見してはいけない」という空気が和らぎ、万が一「きつく聞こえた言い方」があっても、早めに修正がしやすくなるのです。

 

パワハラを恐れて口をつぐむのではなく、「日常の信頼づくり」と「事実に基づく伝え方」をセットで設計することが、安心して指導できる状態につながると考えます。