「やっぱり女の子を産んでおいてよかったわ」──。夫を亡くし、月15万円ほどの年金で一人暮らしをする70代の母親からそう言われた45歳のナオコさん。しかし母親はこれまで、「弟は家を継ぐから」と長男を何かと優先してきました。進学では姉に国公立を求める一方、弟は私立大学へ。40歳まで実家暮らしを続けた弟の身の回りの世話も母親がしていました。それなのに、老後の世話は娘に頼る──。長年胸にしまってきた思いが、ナオコさんの口からあふれ出します。
やっぱり女の子は頼りになるわね!〈年金月15万円〉〈長男教〉の70代母の言葉に45歳長女が思わず二度聞き…「月2万円」で実家に居続けた弟を優遇した母の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

月2万円でも「弟がいてくれるから安心」

大学卒業後、ナオコさんはそのまま東京で就職しました。以来20年以上、仕事をし、人間関係を築きながら東京で暮らしています。一方、弟は大学を卒業してからも実家に残りました。

 

家に入れるお金は月2万円。それでも食事や洗濯など、身の回りのことは母親がしていました。30代後半になっても大きくは変わりません。

 

「少しは家事をやらせたら? あの子のためにもならないよ」「お母さんだって、いつまでも元気じゃないでしょう」

 

ナオコさんがそう言っても、母親は、「いいのよ。あの子がいてくれるから安心なんだから」と笑います。

 

父親が亡くなったあとも、「男の子が家にいてくれるから心強い」「この家も、いずれ弟が守ってくれるから」と話していました。

 

ナオコさんも、そのうち何も言わなくなりました。

 

「本人たちがそれでいいなら、もう私が口を出すことでもないと思ったんです」

「家を継ぐ」はずだった弟は、新築を建てて独立

ところが昨年、40歳になった弟が結婚しました。

 

長年実家で暮らし、家に入れていたお金も月2万円ほどだったため、弟にはそれなりの貯蓄があったようです。結婚が決まると、ほどなくして妻と暮らすための新築一戸建てを購入し、実家を出ていきました。

 

「あれだけ実家で身の回りのことをやってもらっていたんだから、お金は貯まるよね、とは思いました。でも、それ自体を責めるつもりはなかったんです」

 

ただ、ナオコさんには引っかかるものがありました。

 

自分は「うちはお金がないから」と進学先まで制限された一方、弟は実家で長く親の支援を受け、その後は新しい家を構えた。

 

「それでも母はずっと『弟は家を継ぐから』って言っていたんですよね。新築を建てて出ていったと聞いたときは、『あれ、家を継ぐ話はどうなったの?』とは思いました」

 

久しぶりに帰省すると、一人暮らしになった母親は以前より少し小さく見えました。家の中にも、以前ほど手入れが行き届いていないところがあります。

 

母親は弟の結婚を喜んでいましたが、話しているうちに少しずつ愚痴が出てきました。

 

「弟、最近は全然顔を出さないのよ」「お嫁さんの予定ばっかり優先して」「結婚したら、本当に変わっちゃった」そして最後には、「あんなにいろいろしてあげたのにね」と寂しそうに漏らしました。

 

ナオコさんは内心、「それ見たことか」と思ったそうです。ただ、その場では何も言いませんでした。

 

ところが、続く母親の言葉には黙っていられませんでした。

 

「やっぱり女の子は頼りになるわね」

何気なく今後の暮らしについて話していたとき、母親はさらりと言いました。

 

「まあ、これから何かあったら、お姉ちゃんにお願いするから」

 

「何を?」

 

ナオコさんが聞き返します。

 

「老後よ。病院とか、介護とか。やっぱり女の子は頼りになるわね。女の子を産んでおいてよかったわ」

 

思わず聞き返しました。

 

「弟は?」

 

すると母親は、少し困ったような顔で答えました。

 

「だって弟は結婚したでしょう。お嫁さんもいるんだし、あんまり迷惑をかけられないじゃない」「私には迷惑かけてもいいの?」

 

母親は黙りました。

 

ナオコさんの頭には、これまでのことが次々と浮かびました。

 

「ずっと『弟が家を継ぐから』って言ってたよね。私にはお金がないから国公立へ行けって言ったのに、弟は私立。40歳まで実家にいて月2万円しか入れなくても、ご飯も洗濯も全部やってあげた。それも『家を継ぐ男の子だから』だったんでしょう?」

母親は、「でも、あなたはお姉ちゃんだし……」と口ごもりました。

 

そこでナオコさんは、長年言えなかったことを口にしました。