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「もう関わらない」と言った長男
「もう来るなと言っただろう。俺のところに二度と来るな」
東京都内で一人暮らしをする前田博さん(仮名・72歳)。妻を5年前に亡くし、築40年の戸建てに一人暮らし。生活のベースとなる年金は月20万円弱。それに対して、月の食費は4万円、光熱費2万2,000円、通信費8,000円、医療費1万5,000円――合計でおよそ14万円。年金から生活費を差し引くと、月3万円ほどが残ります。
さらに預貯金は手つかずで残っている退職金含めて約3,000万円ありました。裕福とまでいかなくても、これから先を含めて不安はほとんどありません。「自分の老後は自分で何とかできる」と考えていました。
総務省『家計調査 貯蓄・負債編(2025年平均)』によると、二人以上の世帯のうち「世帯主が70歳以上の無職世帯」の1世帯当たり平均貯蓄現在高は2,404万円(世帯主が70歳以上全体では2,471万円)。博さんの貯蓄3,000万円という額は、一般的な高齢者世帯の平均値を大きく上回っており、彼が「自分の老後は自分で何とかできる」と確信するだけの十分な裏付けがあるといえます。
問題は長男・前田哲也さん(仮名・44歳)です。哲也さんはバツイチで今は独身。都内の会社に勤め、年収は約520万円あります。実家から電車で1時間ほどの場所にある賃貸マンションで暮らしていました。
親子の関係が悪くなったのは、2年前です。
哲也さんから突然、「会社を辞めたい」と相談されたことがきっかけでした。仕事のストレスが大きいという話でしたが、博さんが聞く限り、生活費の見通しは立っていません。
「半年くらい休んだって、何とかなるだろ」
哲也さんはそう言いました。
しかし、博さんは反対しました。貯金額を尋ねると300万円くらいだといいます。養育費の支払いもあります。次の勤め先のあてもなく仕事を辞めるのは、あまりに無責任に感じました。
話し合いは口論に発展。その後、哲也さんは実際に退職。半年ほど無職で過ごしたあと、別の会社に再就職しました。ただ、その間に家賃や生活費が足りなくなり、博さんは約80万円を援助しています。しかしそのあとも哲也さんから金銭の相談は続きました。
「今月、ちょっと足りない」
「カードの支払いが重なった」
「30万円だけ貸してくれないか」
博さんは何度か応じました。しかし、貸したお金は一度も返ってくることはなく、合計すると約150万円になっていました。博さんが返済を求めると、哲也さんは怒りました。
「親子なのに、金のことばかり言うのかよ」
これを境に、2人は連絡を取らなくなりました。哲也さんから「もう親子として付き合わない」と言われ、博さんも「それなら好きにしろ」と答えました。最初の絶縁です。