高収入を得る中高年管理職の多くが、恵まれた待遇の裏で膨大な業務量と重い責任とプレッシャーに晒されています。そのようななか、限界に達したある男性。救急搬送された病院で下した決断とは。見ていきましょう。
「体を壊して倒れてもダメでした…」〈年収1,020万円〉47歳管理職、救急搬送された病院のベッドで「決断したこと」 ※写真はイメージです/PIXTA

救急搬送で見えた現実

異変が起きたのは、アポイント続きの平日でした。午前中から胸の圧迫感と強いめまいがありました。それでも会議を2本こなし、午後には取引先とのオンライン会議に参加しました。

 

夕方、席を立ったところで立っていられなくなり、その場で倒れてしまいます。同僚が119番通報し、病院へ救急搬送されました。診断は重度の疲労。医師からは「しばらく仕事を休んでください」と言われました。

 

その日の夜、妻が病院に来ました。達也さんは、会社に連絡したことを話しました。すると上司から返ってきたのが、冒頭の言葉でした。

 

「倒れる前に言ってくれないと困る。仕事が止まるから」

 

責められたように感じた、と達也さんは振り返ります。

 

「じゃあ、どうすればよかったんだろうと思いました。仕事を減らしてほしいと言えばよかったのかもしれません。でも、管理職になってから、そんなことを言える雰囲気ではなかった」

 

病院のベッドで、達也さんは初めて退職を具体的に考えました。住宅ローンは残っています。子どもの教育費もこれからです。退職すれば、年収1,020万円はなくなります。妻はパート勤務で、年収は約130万円。預貯金は約850万円ありましたが、長男の大学進学費用を考えれば、安心できる金額ではありません。

 

それでも、達也さんは退職を決めました。

 

「このまま働き続けて、本当に倒れてしまったら、家族にもっと迷惑をかける。年収を守るために体を壊すのは違うと思いました」

 

退院後、会社に休職を申し出ました。その間に転職活動を始めました。希望したのは、管理職経験を生かせるものの、残業の少ない仕事です。

 

転職先がすぐに見つかったわけではありません。提示された年収は650万円。以前より370万円も下がります。月収ベースで見ると、単純計算で約85万円から約54万円へ(約31万円の減少)。家計への影響は小さくありません。

 

それでも妻は「何とかする」と言ってくれました。

 

「無理なく、働き続けられることのほうが大切」

 

厚生労働省『令和7(2025)年上半期雇用動向調査』によると、転職で賃金が「減少」した割合は31.5%に上り、そのうち「1割以上の減少」は22.0%を占めます。また、内閣府『仕事と生活の調和推進のための調査研究』でも、仕事と生活を両立するために「柔軟な勤務制度やその利用のしやすさ」を求める声が38.0%と最も多くなっています。

 

達也さんのように、家族や健康を守るために年収を下げてでも柔軟な働き方を選ぶ決断は、決して珍しくありません。激務を強いる管理職の在り方を見直し、持続可能なキャリアを再設計することは、現役世代の人たちにとって当たり前の選択肢になっています。