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妻が出した「意外な条件」
予想だにしなかった美紀さんの言葉に、雅彦さんは驚きました。
「俺が家にいるのが、そんなに嫌なのか?」と聞けば、「嫌なんじゃない」と美紀さん。ただ、「週に3日は、朝から夕方まで家にいないでほしい」と続けました。
雅彦さんは言葉を失いました。どこかに行けと言われても、行く当てはありません。
「仕事を始めてもいいし、スポーツクラブに入会したりして、お金を使ってもいい。あなたが家にいない時間が必要なんです」
雅彦さんがいると、どうしても雅彦さんを優先してしまう。結果、自分の時間がなくなる――。
「夫は、『気にしないでどこかに行きなよ』と言ってくれるでしょう。でも、そう言われたとしても、私には無理なんです」
結局、雅彦さんは取引先で週3日、午前9時から午後4時まで働くことにしました。月収は約9万円です。家計にとって大きな収入ではありません。それでも、夫婦関係は少しずつ落ち着きました。雅彦さんが外に出ている間、美紀さんは友人と約束をしたり、再び習い事を始めたりしているそうです。
「今日はどうだった?」などと、夫婦の会話も増えたといいます。
定年後の夫婦関係を良好に保つには、お互いの自立と適度な距離感が欠かせません。国立社会保障・人口問題研究所の『第7回全国家庭動向調査』によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」という考え方への賛成割合は29.5%と初めて3割を下回りました。
しかし実態は、妻が50代の世帯では妻の家事分担が8割以上を占める割合が77.5%にのぼり、妻の家庭内負担が大きいままです。また、夫婦で「旅行(日帰り含む)に出かける」割合も49.2%と半数を割り込んでいます。定年後に一気に距離が縮まることは摩擦を生みやすいため、退職前にお互いの時間や役割分担について話し合い、「近すぎない関係」を意識的に築くことが大切です。