定年退職を迎え、お金の不安もなく穏やかなセカンドライフを楽しみにしていたのに、退職からわずか1ヵ月後、妻から思いもよらない本音を突きつけられます。ある夫婦の事例から、定年後、円満な関係を保ち、お互いに心地よい距離感を築くためのポイントを考えます。
「毎日家にいられると、ツラいの…」〈年金月18万円〉〈退職金2,000万円〉65歳夫、定年退職から30日後、妻から突きつけられた「まさかの提案の中身」 ※写真はイメージです/PIXTA

妻が出した「意外な条件」

予想だにしなかった美紀さんの言葉に、雅彦さんは驚きました。

 

「俺が家にいるのが、そんなに嫌なのか?」と聞けば、「嫌なんじゃない」と美紀さん。ただ、「週に3日は、朝から夕方まで家にいないでほしい」と続けました。

 

雅彦さんは言葉を失いました。どこかに行けと言われても、行く当てはありません。

 

「仕事を始めてもいいし、スポーツクラブに入会したりして、お金を使ってもいい。あなたが家にいない時間が必要なんです」

 

雅彦さんがいると、どうしても雅彦さんを優先してしまう。結果、自分の時間がなくなる――。

 

「夫は、『気にしないでどこかに行きなよ』と言ってくれるでしょう。でも、そう言われたとしても、私には無理なんです」


結局、雅彦さんは取引先で週3日、午前9時から午後4時まで働くことにしました。月収は約9万円です。家計にとって大きな収入ではありません。それでも、夫婦関係は少しずつ落ち着きました。雅彦さんが外に出ている間、美紀さんは友人と約束をしたり、再び習い事を始めたりしているそうです。

 

「今日はどうだった?」などと、夫婦の会話も増えたといいます。

 

定年後の夫婦関係を良好に保つには、お互いの自立と適度な距離感が欠かせません。国立社会保障・人口問題研究所の『第7回全国家庭動向調査』によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」という考え方への賛成割合は29.5%と初めて3割を下回りました。

 

しかし実態は、妻が50代の世帯では妻の家事分担が8割以上を占める割合が77.5%にのぼり、妻の家庭内負担が大きいままです。また、夫婦で「旅行(日帰り含む)に出かける」割合も49.2%と半数を割り込んでいます。定年後に一気に距離が縮まることは摩擦を生みやすいため、退職前にお互いの時間や役割分担について話し合い、「近すぎない関係」を意識的に築くことが大切です。