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入居からわずか3ヵ月で届いた一本の電話…突きつけられた「退去勧告」の現実
しかし、穏やかな日々は長くは続きませんでした。入居からわずか3ヵ月が経過した頃、老人ホームの施設長から智子さんのもとへ突然連絡が入ります。「急ぎでお話ししたいことがあるため、今週末に施設までお越しいただけますか」という内容でした。
「恐れ入りますが、別の施設への転居をご検討いただけますでしょうか」
施設側の説明によると、博さんは環境の変化や認知症の進行により、夜間を中心に大きな声をあげたり、興奮して暴れることが増えていたといいます。そして決定打となったのが、他の入居者とのトラブルでした。意図的ではないものの、制止に入ったスタッフや他の入居者を押しのけた際、相手に怪我を負わせてしまったのです。
「入居前に『認知症の受け入れ実績がある』と聞いていたので、まさか退去になるとは思いもしませんでした」
一般的に、有料老人ホーム等の入居契約には退去要件が定められています。主な理由としては「長期入院が必要になった場合」「費用の支払いが困難になった場合」などのほか、「他の入居者やスタッフへの著しい迷惑行為・暴力行為」が挙げられます。博さんのケースはまさにこれに該当してしまいました。
智子さんはすぐに兄や弟に事情を説明し、支援を求めました。しかし、戻ってきたのはあまりにも冷淡な反応です。
「『うちでは引き取れないよ』『そっちで新しい施設を探してくれ』と言われ、他人事のような態度に強い憤りを覚えました」
頼れるあてを失った智子さんは、ケアマネジャーとともに大急ぎで新しい転居先を探し始めました。しかし、ここで最大の壁が立ちはだかります。転居理由を聞かれた際、「前施設での暴力・暴れによる退去」という事実を伝えると、どの施設からも難色を示されてしまうのです。
施設から示された退去の猶予期間は3ヵ月。
「最悪の場合、また以前のように実家で私が一人で介護するしかありません。でも、一度限界を迎えた在宅介護を続ける自信はありませんでした」
窮地に追い込まれた智子さんを救ったのは、ケアマネジャーの迅速な仲介でした。一人で抱え込まず自治体の「地域包括支援センター」へ相談を要請。併せて専門の精神科医療機関を受診させ、認知症の行動・心理症状(BPSD)を和らげる薬の調整をおこないました。
精神的な興奮状態が落ち着いたタイミングで、医療ケアや行動障害への対応に特化した「特別養護老人ホーム(特養)」への申し入れを実施。事情を汲み取った特養の緊急枠が確保でき、猶予期限の直前に間一髪で転居先を決めることができたのです。
「ケアマネジャーさんや自治体のサポートがなければ、共倒れになるところでした」と智子さんは胸を撫で下ろしています。