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老後資金を脅かす「5つの落とし穴」
真面目に会社員として保険料を納め続けてきた佐藤さんが、なぜこれほどの事態に陥ってしまったのでしょうか。年金制度の複雑さと、家族のお金にまつわる「5つの落とし穴」を見ていきましょう。
1.「額面」と「手取り」の乖離(税金・社会保険料の天引き)
年金は給与と同様に課税対象です。支給額(額面)から「所得税」「住民税」、そして「介護保険料」「国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)」が順次天引きされます。これらの天引き額は世帯の収入や地域によって異なりますが、一般的に額面の約10〜15%程度が引かれます。
2.60歳以降の働き方による「在職老齢年金」の支給停止
定年後も厚生年金に加入して働く場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計が一定の基準枠を超えると、超えた分の半額程度が年金からカットされます。
3.「加給年金」の適用条件に関する誤解
厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になった際、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算される「加給年金(年金の家族手当)」。しかし、妻が一定以上の厚生年金期間を持つ老齢厚生年金を受け取る権利を得た場合や、妻自身が65歳に達した時点で支給はストップします。
4.額面収入によって跳ね上がる「医療・介護の自己負担割合」
再雇用での給与収入と年金収入の合計が一定水準を超えると、介護保険サービスや医療機関での自己負担割合が「1割」から「2割」「3割」へと引き上げられます。収入が増えた分、出ていく医療・介護コストも増えてしまうという逆転現象が起きるのです。
5.「ねんきん定期便」に書かれた数値を鵜呑みにするリスク
50歳以上の「ねんきん定期便」に記載されている金額は、「現在の加入条件が60歳まで続いた場合」の試算値です。60歳以降の働き方の変化や、将来天引きされる税金・保険料、あるいは各種加算の失効条件までは反映されていません。
佐藤さんはその後、長男夫婦と話し合って生活費の分担割合を変更し、実母の介護についてもケアマネジャーに相談して自己負担を抑えられる公的サービスの活用へ切り替えました。また、健一さん自身の働き方も再検討し、在職老齢年金でカットされない範囲での勤務スタイルへと調整を進めています。
「年金振込通知書をもらって初めて事態の深刻さに気づくのでは遅すぎました。ねんきん定期便に書かれている数字はあくまで『額面』であり、そこから何が引かれ、働き方によってどう変動するのかを事前に把握しておくべきでした」
公的年金は老後の生活を支える基盤ですが、その仕組みは決して単純ではありません。「知らなかった」では済まされない年金ルールや税金の仕組み。50代・60代のうちに自らの手取り額を正しく試算し、家族間のお金のルールを明確にしておくことこそが、老後の想定外のトラブルを防ぐことになるのです。