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退職金2,000万円と再雇用… 順風満帆のはずだった「定年後の設計」
長年勤めた企業を60歳で定年退職した小林彰(60歳・仮名)さんは、退職金2,000万円とこれまでの貯蓄をあわせ、比較的余裕のある老後資金を準備していました。
そこで妻の恵美子(58歳・仮名)さんとともに、定年祝いとして長年楽しみにしていたヨーロッパへの海外旅行を計画。旅行費用100万円の手配も終えていました。
彰さんは定年後も再雇用制度を利用して同社に留まり、週5日のフルタイム勤務で月額22万円の給料を得る予定でした。65歳で公的年金の受給が始まるまでは無理のない範囲で働き、休日には夫婦で旅行や趣味を楽しむ――まさに思い描いていた理想の老後生活がスタートするはずでした。
ところが、出発を2週間後に控えたある朝、事態が一変します。恵美子さんが自宅で突然倒れ、病院へ救急搬送されました。診断結果は急性脳梗塞でした。迅速な治療により命に別条はなかったものの、右半身に麻痺が残り、リハビリを重ねても要介護2の認定を受けることになりました。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、要介護者等となった主な原因は「認知症」(16.7%)、「高齢による衰弱」(15.6%)、「骨折・転倒」(14.6%)が上位を占め、「脳血管疾患(脳卒中)」は12.5%となっています。
脳血管疾患は特に重度な「要介護5」においては27.6%と原因の第1位を占めており、発症すると一気に手厚い介護が必要な状態へ進行しやすい傾向があります。昨日まで健康だった人が突然ケアを必要とし、入院費用や自宅のバリアフリー改修費など、短期間で様々な環境整備が求められる事例は珍しくありません。
幸い、彰さん夫婦は以前から三大疾病に対応する民間医療保険に加入していたため、入院費や初期の治療費の大半は保険金で賄うことができました。ただ直前キャンセルとなった海外旅行の違約金が発生したほか、自宅の手すり設置や段差解消などの改修費用として自己負担分が一定額発生しました。
より深刻だったのは、お金そのものよりも「これからの暮らし方」の大幅な変更でした。恵美子さんの退院後、彰さんは日々の家事や通院の付き添い、介護のサポートに追われることになります。