(※写真はイメージです/PIXTA)
息子から2度届いた「行けない」の連絡
地方都市のサービス付き高齢者向け住宅に住むミノルさん(77歳)は、月約16万円の公的年金を受給しながら、バリアフリーが整った施設で自立した生活を送っています。1年前に妻を亡くし、自宅の管理が難しくなったことから現在の住まいに移りました。生活相談サービスや安否確認の対応が整っている環境には満足しているものの、どこか心の底に消えない寂しさを抱えています。
今夏のお盆前のことです。
一人息子のナオキさん(50歳)から電話が入ったのは7月下旬。「おやじ、すまない。俺も妻も仕事が立て込んでいて、息子の夏期講習もあって、今年のお盆は顔を出しに行けそうにないんだ」と告げられました。
息子の生活や孫の将来を思えば「無理をしなくていい」と答えるしかありませんでしたが、受話器を置いたあとの部屋の静けさに、胸が締め付けられるような思いがしました。
落ち込むミノルさんの様子に気づいたサ高住の同年代の入居者が、共用スペースで優しく声をかけてくれます。
「お盆に来られないのは残念だけど、9月にはすぐにシルバーウィークという連休がまた来るじゃない。がっかりしないで、次のチャンスを楽しみに待ちましょうよ」その言葉に励まされ、ミノルさんは「そうだな、次の連休には少しくらい会えるかもしれない」と密かに心待ちにするようになりました。
しかし、シルバーウィークを間近に控えた9月半ば、息子のナオキさんから再び連絡が入りました。
「やっぱり今回もどうしても時間が取れそうにないんだ」
受話器越しに深々と頭を下げる息子の気配を感じ取り、ミノルさんは「わかった、気にするな。忙しいのはいいことだ」と平静を装って電話を切りました。しかし、室内で一人になった途端、寂しさと悲しみが押し寄せてきます。
「過剰な期待はしていなかった。でも……やっぱり、正直にいえば寂しいし悲しい」
連休が始まると、サ高住の館内からは人の気配が薄くなりました。家族が迎えにきて外出する入居者や、数日間外泊する人の姿が見られ、いつも以上に建物全体が静かになります。
自室のソファに腰掛け、点けたままのテレビに目をやると、ニュース番組では行楽地や高速道路の大きな渋滞、家族連れで賑わう空港の様子が連日映し出されていました。楽しそうに微笑み合う家族の映像を眺めているうちに、ミノルさんは思わず泣いていたそうです。お盆に続き、この連休も自分は一人ぼっちなのだという現実に、人知れず涙を流すことしかできません。