お盆休みを利用して実家へ帰省した際、高齢の親から思いもよらない怒りを買ってしまう……なぜ親は拒絶の言葉を口にしたのか。ある親子のすれ違いから、親が抱く複雑な感情と、親子の適切なコミュニケーションを考えます。
「もう帰ってくれ!」〈年金月17万円・70歳父〉、実家帰省中の〈年収1,200万円・42歳長男〉に大激怒のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

親のプライドとの向き合い方

それから約2カ月後。妹が間に入り、ようやく義雄さんと話ができた直樹さん。

 

義雄さんはぽつりと話し始めます。

 

「金がないことよりな……」

「お前に『払ってやる』と言われた瞬間、親として否定された気がした」

 

直樹さんは返す言葉を失います。自分は助けるつもりでした。父を見下したつもりなど、一度もありません。
それでも義雄さんには、「もう何もできない老人」と宣告されたように聞こえてしまったというのです。

 

とはいえ、預貯金が心許なく、雨漏りが直せないのは事実。過度な節約により、エアコンをつけていないのも事実です。直樹さんは、義雄さんが受け入れやすいよう、まずは伴走することにしました。

 

「雨漏りが心配だから、一緒に業者へ見積もりを頼まないか」

「暑いから僕も実家で過ごせない。新しいものを一緒に選ぼう」

 

また調べてみると、市には補助制度があり、実際よりも安く、屋根の修理、エアコンの買い替えができることを知りました。

 

「やっぱり、若い人のほうが情報を得るのが上手だな」と義雄さん。それからは、子どもから援助を受けるハードルが少し下がったといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、「高齢者への経済的援助は、公的機関より家族が行うべきだ」とする考えへの賛成割合は20.6%と過去最低を記録しました。親を一方的な「支援対象」として扱うのではなく、対等な関係で選択を共にする「伴走」の姿勢こそが、親の尊厳を守りつつ必要な援助を届ける鍵となりそうです。