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「相続=権利だけでなく義務も引き継ぐ」という原則
相続でアパートを取得した場合、引き継ぐのは土地建物という「資産」だけではありません。前オーナーである親が締結していた賃貸借契約や管理契約など、物件に付随する法的関係も原則として承継することになります。つまり、相続人は新たな所有者として、既存入居者に対する「貸主としての地位」や、管理会社との契約上の義務を引き受ける立場になるのです。
特に注意が必要なのが、既存の賃貸借契約です。借地借家法の影響により、相続人が「家賃が安すぎる」「今の相場に合わない」と考えても、直ちに賃料を自由に変更できるわけではありません。低廉な家賃であっても、契約が有効に続いている以上、その条件に一定程度拘束されます。賃料を見直すには、賃借人との合意や、場合によっては賃料増額請求といった手続きが必要になります。
また、公正証書で作成された契約書が存在する場合、その契約内容は強い証拠力を持ちます。公正証書だから絶対に解除できないというわけではありませんが、「親が結んだ契約だから知らない」「今の条件では不利だから破棄したい」という理由だけで、一方的に否定することは困難になります。相続不動産では、物件そのものだけでなく、契約関係の中身まで確認することが不可欠です。
解約を阻む「不利な特約」の有効性
相続したアパートでまず注意すべきなのは、その契約が「賃貸借契約」なのか、「管理委託契約」なのかという点です。特にサブリース契約では、オーナーから見ると実質的には賃貸管理会社に任せているような感覚になりがちですが、法的にはオーナーとサブリース会社との間に賃貸借契約が成立していることが通常です。
この場合、借地借家法の影響により、契約関係は相当程度固定化されます。オーナー側が「管理会社を変更したい」「条件が合わないので契約を終わらせたい」と考えても、一般的な管理委託契約のように簡単に解除・変更できません。サブリース会社も借地借家法上の「賃借人」として扱われるからです。これに対し、通常の賃貸管理契約であれば、契約内容にもよりますが、一定の予告期間を置いて解除し、別の管理会社へ変更できることも多いです。この違いを理解しないまま相続すると、想定以上に運用の自由度が制限されることになります。
さらに問題となるのが、「30年間一括借り上げ」「長期間の賃料固定」「中途解約制限」「高額な違約金条項」などの特約です。これらは直ちに無効となるわけではなく、アパート経営が事業として扱われる以上、一般消費者と同じような保護を当然に受けられるとは限りません。
もちろん、あまりに一方的で不合理な条項については、信義則違反や事情変更の原則などを根拠に、契約内容の見直しや解除を主張する余地がまったくないわけではありません。しかし、これらはいわば一般条項による例外的な修正であり、法的ハードルは相当に高いのが実務です。「不利だから」「相続人にとって納得できないから」というだけで認められるものではありません。だからこそ、相続後に初めて契約書を見て驚くのではなく、相続前からサブリース契約や管理契約の内容を確認しておくことが重要です。
相続後に発覚する「管理契約」の見直しリスク
相続後に問題となりやすいのが、親世代が締結していたサブリース契約や管理契約の内容です。サブリース契約の場合、法的には賃貸借契約として整理されるため、条件が不利だと感じても、借地借家法の影響により簡単に解除・変更できるとは限りません。賃料を見直したい場合も、基本的には賃料増額請求のプロセスを踏む必要があります。
これに対し、一般的な賃貸管理契約であれば、契約内容にもよりますが、解除や管理会社の変更を視野に入れて交渉できるケースもあります。この違いを理解しないまま相続すると、「管理会社を替えればよいと思っていたのに、実際には契約上動けない」という事態になりかねません。
だからこそ、相続してから契約内容を見て驚くのではなく、相続前の段階でリーガルチェックを行うことが重要です。特に承継予定の相続人がいる場合には、契約締結時からその相続人も内容を把握し、将来の運用に耐えられる契約かどうかを確認しておくべきでしょう。
「透明性」と「コントロール権」を確保する新築アパート投資
古い物件には、建物の老朽化や修繕対応の難しさといった物理的な問題だけでなく、法的なリスクも蓄積しています。たとえば、長年入居している賃借人との低廉な賃料設定、昔ながらの管理会社との契約関係、曖昧な修繕負担や更新条件など、過去の人間関係や契約慣行に縛られているケースは少なくありません。相続人から見れば、物件を引き継いだ時点で、こうした“見えにくい法律関係”までまとめて承継することになります。
これに対し、新築アパート投資では、賃貸借契約、管理契約、修繕体制、将来の出口戦略まで、比較的新しい法規制や実務感覚を前提に設計しやすいという利点があります。自ら開発段階から関与できれば、オーナー主導で契約内容を整え、将来の管理・売却・相続に向けた透明性を高めることも可能です。
もちろん、新築であればリスクがないというわけではありません。しかし、中古物件のように過去の契約関係や人間関係というブラックボックスを引き継ぎにくい点は、大きな違いです。次世代への承継まで見据えるなら、物件の収益性だけでなく、「将来もコントロールできる資産か」という視点が重要になるでしょう。

