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1棟目は満室経営。それでも融資はNG
「1棟目のアパート経営が順調なのだから、2棟目、3棟目と規模を拡大していくのは難しくないはずだ」。本業で高い実績を持つドクターほど、1棟目の成功にそう確信して、さらに不動産投資の世界に踏み込みます。しかし、いざ次の物件を買おうと銀行に出向いたとき、想定外の現実に直面することが少なくありません。それは、銀行から融資を断られてしまうという驚きの現実です。これはなぜなのでしょうか。
都内勤務の43歳医師Aさんは、3年前に「地方都市の中古木造アパート(利回り12%)」を購入しました。日中は外来と手術に追われ、夜は当直。「せっかく時間と資金を投じるなら、毎月の手残りが大きい物件でなければ意味がない」多忙な日常の中で出した結論でした。
狙いは的中したかに見えました。物件は満室に近い状態を維持し、毎月まとまった家賃収入が口座に入ります。Aさんは静かな手応えを感じながら2棟目を物色し、メインバンクへ向かいました。年収3, 000万円、1棟目も満室。融資の承認は当然と考えていたAさんに、担当者はこう告げます。
「大変申し訳ありませんが、現状ではこれ以上の追加融資は厳しいです。」
「医師の自分が融資NG?」……Aさんは耳を疑いました。順調なはずの経営、抜群の本業収入。それでもなぜ、銀行は首を縦に振らないのか。Aさんは、ショックで足元が静かに崩れていくような感覚を覚えました。
「キャッシュフローが出ている」と「銀行評価が高い」は別物
Aさんが直面したのは、初心者が最も誤解しやすいポイントです。毎月の利益が出ていることと、銀行が資産として高く評価することは、まったく別です。
銀行は2棟目以降の融資審査で、保有中の1棟目が自社の評価基準で「資産」なのか「負債」なのかを厳格に見ます。代表的な手法が積算評価(原価法)です。土地の路線価と建物の残存価値から、担保価値を算出する手法です。
これをAさんの物件に当てはめると、
●建物価値はほぼゼロです。木造の法定耐用年数は22年。築古のため、帳簿上の建物価値はほとんど残っていません。
●土地評価も低いのが現実です。地方都市のため路線価が低く、敷地が広くても担保価値は限定的です。
その結果、銀行から見たAさんの状態は、「資産価値がほとんどない物件に、多額の借入残高だけが残っている状態」、つまり実質的な債務超過でした。利回りだけを重視した1棟目の選び方が、拡大スピードを止めてしまっていたのです。
解決策は、ポートフォリオの「質」を組み換えること
ここで有効なのが、2棟目にあえて評価の出やすい「都市部・新築物件」をぶつけ、財務バランスを中和させる戦略です。多くの人は1棟目で中古を買うと2棟目も中古を選びがちですが、積算がマイナスに振れている状態で同じ選び方をすれば、債務超過の幅が広がるだけです。
利回りは一見低く見えても、都市部の新築をポートフォリオに加えると、建物の耐用年数は満額残り、路線価も維持されます。購入時点で「物件価格 ≒ 積算評価」が成立しやすく、借入に見合う資産価値を計上できます。1棟目のマイナスを2棟目のプラスで相殺し、財務全体を健全化させるという考え方です。
新築アパートが規模拡大に有利な3つの理由
資産拡大を図る際、新築アパート投資が有利な点は、大きく3つあります。
①長期・低金利融資が引きやすい
融資期間は「法定耐用年数 − 築年数」が基本。新築であれば30〜35年の超長期も視野に入り、月々の返済負担を抑えられます。与信回復も早まります。
②出口戦略を描きやすい
都市部の新築は経年による賃料・資産価値の下落が緩やかで、10年後、20年後でも買い手が付きやすく、銀行から見ても「売却で債権回収しやすい案件」と映ります。
③積算評価で財務が健全化する
高い積算を持つ物件はバランスシート上の優良資産になります。1棟目で付いてしまった「要注意」のラベルを剥がす効果が期待できます。
目先の利回りではなく、銀行からどう見られているかが大切
1棟目で止まる方と、着実に規模を拡大していく方の差は、「目先の利回り」を見ているか、「銀行評価」を意識しているかです。
本業で評価され、信用も収入もある。だからこそ、Aさんのように「自分なら大丈夫」と感じやすいのも事実です。しかし銀行は個人の属性だけではなく、保有資産の質も含めて総合的に判断します。
潤沢な本業収入と高い社会的信用を持つドクターであればこそ、初期段階から積算評価を意識した戦略を組むことで、その与信枠を最大限に活かせます。
「利回り12%」という表面的な魅力に惑わされず、長期視点で銀行を味方につけるポートフォリオを構築していくことが、規模拡大の正攻法といえるのです。

