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家族に迷惑をかけられないと、限界を超えてしまう高齢者たち
エアコンが壊れたあと、幸子さんは扇風機を回して過ごしました。氷水をつくって足を浸したり、濡れたタオルで首周りを冷やしたり。さまざまな暑さ対策をしたものの、限界を迎えてしまいました。
「なんで相談してくれなかったの!」
恵さんはそう声を荒らげました。今回は軽症ですんだものの、取り返しのつかない事態になっていたかもしれません。
「恵は仕事で忙しいし……暑いくらいで娘を呼ぶのは申し訳ないと思って……」
何の遠慮なのか、理解に苦しむ恵。退院後、幸子さんはしばらく恵さんの自宅で過ごすことになったものの、家族に迷惑をかけているという思いから、何度も「もう帰る」と口にしました。しかし恵さんは首を横に振ります。
「迷惑だと思ってない。きちんと頼ってくれないと、余計に面倒なことになる」
そう念を押します。そして恵さんの貯金で新しいエアコンを購入。工事も終わったタイミングで、幸子さんは実家に帰っていきました。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、「年老いた親の介護は家族が担うべきだ」の賛成割合は38.9%、「高齢者への経済的援助は家族が行うべきだ」は20.6%に留まります。家族扶養の意識が薄れるなか、高齢の親には「子どもに迷惑をかけたくない」という遠慮が生じやすくなっています。
一方で、同所の『生活と支え合いに関する調査』では、働く人で「介護や看病で頼れる人がいない」割合が35.3%に上ります。仕事等で多忙な子世代の実態を親側が察して遠慮する傾向があり、突発的な生命の危機であっても相談を躊躇してしまう――そのような今どきの親子関係が浮き彫りになっています。
親側の「迷惑をかけたくない」という強い遠慮が、時に取り返しのつかない事態を招く――突発的な生命の危機を防ぐためにも、日頃から「何かあれば気兼ねなく頼れる関係」を親子間で築いておくことが不可欠です。