76歳の母から届いた12件もの不審な着信。慌てて実家に駆けつけた娘が見たのは、思いも寄らない惨状でした。その背景にあったのは、限られた年金での暮らしと「子どもに迷惑をかけたくない」という強い親心です。生命の危機すら招く高齢親の遠慮にどう向き合うべきか。今どきの親子関係と適切な対策の重要性を考えます。
「なんで電話に出ないのよ!」〈年金月12万円〉76歳母から12件もの不審な着信。慌てて駆けつけた48歳長女、実家の惨状に絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

家族に迷惑をかけられないと、限界を超えてしまう高齢者たち

エアコンが壊れたあと、幸子さんは扇風機を回して過ごしました。氷水をつくって足を浸したり、濡れたタオルで首周りを冷やしたり。さまざまな暑さ対策をしたものの、限界を迎えてしまいました。

 

「なんで相談してくれなかったの!」

 

恵さんはそう声を荒らげました。今回は軽症ですんだものの、取り返しのつかない事態になっていたかもしれません。

 

「恵は仕事で忙しいし……暑いくらいで娘を呼ぶのは申し訳ないと思って……」

 

何の遠慮なのか、理解に苦しむ恵。退院後、幸子さんはしばらく恵さんの自宅で過ごすことになったものの、家族に迷惑をかけているという思いから、何度も「もう帰る」と口にしました。しかし恵さんは首を横に振ります。

 

「迷惑だと思ってない。きちんと頼ってくれないと、余計に面倒なことになる」

 

そう念を押します。そして恵さんの貯金で新しいエアコンを購入。工事も終わったタイミングで、幸子さんは実家に帰っていきました。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、「年老いた親の介護は家族が担うべきだ」の賛成割合は38.9%、「高齢者への経済的援助は家族が行うべきだ」は20.6%に留まります。家族扶養の意識が薄れるなか、高齢の親には「子どもに迷惑をかけたくない」という遠慮が生じやすくなっています。

 

一方で、同所の『生活と支え合いに関する調査』では、働く人で「介護や看病で頼れる人がいない」割合が35.3%に上ります。仕事等で多忙な子世代の実態を親側が察して遠慮する傾向があり、突発的な生命の危機であっても相談を躊躇してしまう――そのような今どきの親子関係が浮き彫りになっています。

 

親側の「迷惑をかけたくない」という強い遠慮が、時に取り返しのつかない事態を招く――突発的な生命の危機を防ぐためにも、日頃から「何かあれば気兼ねなく頼れる関係」を親子間で築いておくことが不可欠です。