物価高が続くなか、孫へのお小遣いや帰省の出費を見直すケースが増えています。ある70歳女性も苦渋の決断で長年の習慣を手放しましたが、その日の夜、思いもよらない「現実」に直面することとなりました。高齢期の切実な家計実態と、それに伴って変化する家族との関係性について考えていきます。
「ごめんね、もうお小遣いはあげられない…」〈年金月14万円・70歳女性〉、「孫1人に1万円」をやめた夜に耳にした残酷な真実 ※写真はイメージです/PIXTA

生活が苦しいからお小遣いはなし

「盆は、みんなが来るのが楽しみなの。でも、1つだけ言わなければならないことがありました」

 

そう話すのは、神奈川県で一人暮らしをする佐藤久美子さん(70歳・仮名)です。夫を5年前に亡くし、現在の収入は遺族年金などを合わせて月約14万円。毎月の支出は色々合わせて約13万5,000円と、ほぼトントン。

 

以前はパート収入もありました。しかし、膝を悪くして退職。今は年金だけが頼りです。それでも、お盆と正月だけは特別でした。長男と長女、それぞれの子どもが2人ずつ。孫4人に1万円ずつ包むことを、10年以上続けてきました。年間では、お年玉とお盆玉で8万円になります。

 

「年に2回しか会えないですから。孫の笑顔を見るのが楽しみだったんです」

 

ところが、長く続く物価高の影響で、生活費はギリギリいっぱい。

 

「このままでは貯金が減るばかりだと……怖くなりました」

 

通帳の残高は約300万円。急な入院や介護が必要になれば、あっという間になくなるでしょう。国立社会保障・人口問題研究所『2022年生活と支え合いに関する調査』によると、金銭的な理由で「不意の出費に備えた貯蓄がない」とする単独世帯の割合は17.7%に達しています。佐藤さんのように不安を抱える人は、実に多いのです。

 

お盆前、長男と長女に生活が苦しく、いつものお小遣いを渡すのが難しくなったと伝えました。どちらからも「そんなこと、気にしなくていい。子どもたちも大きくなったし、もういいから」と言ってくれたそうです。

 

帰省当日。家の中は久しぶりににぎやかでした。食卓を囲み、孫たちもいつものように笑っていました。食事が終わると、佐藤さんは少し疲れを感じ、台所で湯飲みを片付けていたときのことです。

 

そのときです。廊下の向こうから、孫たちの声が聞こえてきました。

 

「今年からもらえないんだって」

 

少し笑いながら続いた言葉が、耳に入ります。

 

「お小遣いないなら来る意味ないよな」

「親が帰るからついていっているだけだし」

「おばあちゃん家は暇だからね」