物価高が続くなか、孫へのお小遣いや帰省の出費を見直すケースが増えています。ある70歳女性も苦渋の決断で長年の習慣を手放しましたが、その日の夜、思いもよらない「現実」に直面することとなりました。高齢期の切実な家計実態と、それに伴って変化する家族との関係性について考えていきます。
「ごめんね、もうお小遣いはあげられない…」〈年金月14万円・70歳女性〉、「孫1人に1万円」をやめた夜に耳にした残酷な真実 ※写真はイメージです/PIXTA

私、お小遣いで気を引いていたんです

孫たちも悪意があったわけではないのでしょう。帰省は、あくまでも親のイベントであって、孫にとっては退屈なものかもしれません。これまで「おばあちゃん、ありがとう」と受け取っていた笑顔も、「また来るね」と言ってくれた言葉も、その一部にはお小遣いへの期待が含まれていたはずです。

 

そう考えると、胸の奥が重くなりました。夕方、帰り支度をする孫たちは、いつも通り「またね」と手を振って帰っていきました。誰もお小遣いの話には触れませんでした。

 

帰省が終わった夜。長女から1本の電話がありました。

 

「今日はありがとう。子どもたち、変なこと言ってなかった?」

 

佐藤さんは少し迷ったものの、聞いてしまった会話をそのまま伝えました。電話の向こうで、長女は「ごめん……」と黙り込みました。佐藤さんも責めるつもりはありませんでした。

 

「私も、お小遣いで機嫌をとっていたのよ」

 

孫はいつまでも純粋無垢な存在と思い込もうとしていた部分と、そんなわけにはいかないとわかっていた部分があったことに、改めて気付かされたといいます。長男と長女には「今度から無理して帰省はしなくてもいい」と伝えました。


「孫たちも分別がつく年齢、いつまでも親と一緒というわけにはいきません。孫たちが成長して変わっていくように、私も変わっていかないといけませんね」

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の52.1%が生活意識を「苦しい」と感じています。佐藤さんのような「女の単身世帯」は高齢者世帯全体の33.2%を占め、年約168万円の年金収入が該当する「所得200万円未満」の高齢者世帯は33.3%に上ります。

 

また、高齢者世帯の25.8%は貯蓄額が「300万円以下」であり、急な出費に備えて年間8万円の孫への出費を断念せざるを得ない切実な家計実態がうかがえます。

 

帰省の際にこっそりお小遣いを渡してくれる祖父母――そんな光景も、だんだんとみられなくなるのかもしれません。