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完成した新居に行ったのは一度きり
半年後、新居は完成。完成祝いと称し、遊びに行きました。新しい家に孫も大喜びで、その姿を見て高橋さん夫婦もほっこりしたといいます。しかしその後は、長男夫婦から「遊びに来て」という連絡が入ることは一度もありませんでした。「忙しいんだろう」と最初はそう考えていました。しかし、しばらく経っても状況は変わりません。LINEを送っても返信は数日後ということも珍しくありませんでした。
「今週は予定がある」
「また落ち着いたら」
そんな短い返事ばかりです。以前は毎週のように届いていた孫の写真も、ほとんど送られてこなくなりました。正夫さんはある休日、自宅近くまで用事があったため、「少しだけ顔を見に行こうかな」と長男へ連絡しました。
すると返ってきたのは、「今日はやめておいて」という一言でした。理由は分かりませんでした。数週間後、洋子さんは偶然、知人を通じて長男の妻がこう話していたと耳にしたのです。
「援助は本当にありがたかった。でも、お金を出したからって家に何度も来られるのは困る。正直、干渉されたくない」
高橋さん夫婦は、「干渉なんてしたつもりはない」「家を見せてもらって、孫の顔を見せるのも嫌なのか?」とショックを受け、言葉も出なかったといいます。
長男夫婦にも事情はありました。共働きで仕事は忙しく、休日は家族だけで過ごしたい。新居は自分たちの生活の場であり、義父母が頻繁に訪れることには抵抗があった――そんな思いが強くあったのです。
こうした「多額の援助」と「日常の干渉回避」のギャップは、現代の親子関係を象徴しています。国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、別居する既婚の息子(男性)に対し、親が18歳以降に「住宅資金」の援助を行った割合は、近居(移動60分未満)で11.7%、遠居(60分以上)で20.0%に上り、「孫に係わる経費」の援助も共に5割を超えています。
しかし同調査では、夫の親と「15分未満」の至近距離に住む割合が「夫の父親」で18.5%(2008年23.2%)、「夫の母親」で19.8%(同23.7%)へと低下傾向にあります。経済的支援は受け入れつつも、日常生活では一定の距離を保ち、干渉を避けたいという現代の子ども夫婦の自立志向が浮き彫りとなっています。
その後、正夫さん夫婦は、自分たちから「会いに行く」ということを控えるようになりました。援助した500万円について後悔はしていないといいます。一方で、「家を建てる資金じゃなくて、孫との思い出に使えばよかったのかもしれない」という思いを馳せることもあるといいます。