子どもの住宅購入を支援したものの、思わぬ関係の冷え込みに悩む親世代は少なくありません。資金援助で生まれる期待と子世代の距離感のギャップは、どこから生じるのでしょうか。ある夫婦の体験談から、現代の親子関係の実態について考えます。
「孫の顔も見られない…」〈年金月28万円・貯蓄3,800万円〉60代夫婦、長男マイホーム購入に「500万円援助」も、嫁の本音に絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

「老後資金だから」と断った妻

「500万円くらいなら出してあげよう」

 

そう言ったのは神奈川県に住む高橋正夫さん(68歳・仮名)。妻の洋子さん(66歳・仮名)は「老後資金なんだから、そんな大金は簡単に出せないわ」と反対しました。

 

正夫さんは65歳でメーカーを定年退職。退職金を含め、現在の金融資産は約3,800万円あります。夫婦の年金収入は月28万円。手取りにすると23万円ほどです。生活費は毎月20万円を下回り、年金だけでも十分、暮らしていける水準でした。

 

そのようななか長男の翔太さん(38歳・仮名)が注文住宅の建築を決めたと聞き、援助を申し出ました。建築費は約5,400万円。夫婦共働きで住宅ローンは4,700万円、返済期間は35年です。

 

「少しでも借入額を減らせるなら助かる」

 

長男はそう頭を下げました。孫も生まれたばかりでした。

 

「家ができたら、みんなで遊びに来てください」

 

そう言われたことが、正夫さんには何よりもうれしかったといいます。

 

国土交通省『令和6年度 住宅市場動向調査』によると、土地を購入した注文住宅新築世帯の平均購入資金は6,188万円、返済期間は建築資金で平均33.9年、土地購入資金で平均35.6年となっています。長男の翔太さんの資金計画(5,400万円、35年返済)は平均に近い水準と言えます。

 

同調査における自己資金比率は平均32.2%であり、返済負担軽減に向けて親世帯が資金支援を行うケースは少なくありません。実際に、住宅建築資金を贈与した親の平均年齢は71.4歳で、正夫さんと同じ「60代」が47.6%と最多を占めており、老後資金とのバランスを考慮しつつ援助を行う親世代の実態が窺えます。