(※写真はイメージです/PIXTA)
「お前と孫に財産を残したかった」
「実は、知人から勧められた『特別な投資話』に手を出して、大失敗してしまったんだ……」
ヒデオさんは力なく告白しました。信用して預金を投じたものの、思わぬ大きな損失が発生。その穴埋めや補填に追われるなかで1,000万円近い貯金をすべて失い、さらには損失を補うために思い出の品や趣味のコレクションまで売却していたというのです。
騙されたのではないかと疑うサトルさんに、ヒデオさんは「自分の判断だった」と肩を落とします。
「『お子さんや将来のお孫さんのために、資産を増やして残してあげましょう』と言われてね……」
よかれと思って始めた資産運用が、結果として老後資金を丸ごと消失させる最悪の事態を引き起こしていました。大変な状況に陥りながらも相談しなかった理由を尋ねると、ヒデオさんは小声で「怒ると思ったから」と呟いたといいます。
高齢者を脅かす「資産消失リスク」のリアル
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施した『家計の金融行動に関する世論調査2025年[二人以上世帯調査]』によると、家計の金融資産保有額は平均で1,940万円となっていますが、一部の富裕層に引き上げられない実態に近い「中央値」は720万円にとどまります。
さらに、金融資産を「いずれも保有していない(貯蓄ゼロ)」と回答した世帯が5.4%存在するほか、保有している世帯であっても「100万円未満」という層が全体(5,000世帯)の15.7%(784世帯)を占めるなど、多くの家庭で将来への蓄えが十分にあるわけではない現実が浮き彫りになっています。
定期的な労働収入がない高齢期において、「目先の収入を増やしたい」と考える人は少なくありません。また、ヒデオさんのように「子や孫に資産を残してやりたい」と怪しい儲け話に耳を傾けてしまうことも。特に金融知識が十分でなく、判断能力の落ちた高齢者は、「特別」「確実」といった甘いフレーズに惑わされやすく、大切な老後資金を失ってしまうケースが後を絶ちません。
さらに、親としてのプライドや「迷惑をかけたくない」「責められたくない」という感情が邪魔をし、危機的状況に陥っても子どもにSOSを出せないまま孤立してしまう点も、この問題の深刻さを物語っています。
高齢親のためにできること
サトルさんの父ヒデオさんは、「家があるから、どうしてもダメになったら売却すればいい」と語っていたそうですが、住まいを失えば老後の生活基盤そのものが崩壊しかねません。
今回の件を経て、サトルさんは「父が元気そうに見えたことに甘え、生活の裏側まで気を配れていなかった」と深く反省したといいます。それ以来、定期的な電話連絡だけでなく、実家へ足を運ぶ頻度を大幅に増やし、家計のサポートや防犯面での見守りを続けています。
親が子や孫を思う気持ちや、「よかれと思って」行った行動が、時に予期せぬ失敗につながることもあります。「うちの親はしっかりしているから大丈夫」と過信せず、帰省の機会などを通して日ごろからコミュニケーションを深め、お金や暮らしの悩みを気兼ねなく相談できる関係性を築いておくことが重要です。
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