何気ない親の一言や些細な環境の変化がきっかけとなり、長年続いていた家族の集まりが途絶えてしまう――ある家族の事例から、「実家への帰省」は本当に毎年の習慣なのか、考えていきます。
「お盆はホテルに泊まって、と言っただけなのに…」年金月28万円・70代夫婦、長男家族の「お盆帰省消滅」で孫に会えないまま2年の歳月 ※写真はイメージです/PIXTA

「今年も行けない」が続く

ところが、その翌年のお盆。恵子さんが予定を聞くために連絡をすると、返ってきた答えは「子どもが部活なんだ」。年末には「受験が近いから」――理由は毎回変わりますが、リフォームのため「それなら帰らない」と言ったときから、長男家族は一度も帰省をしていません。

 

しかし、不思議なことに、長男一家はSNSで北海道旅行やテーマパークへ出かけた写真を投稿していました。

 

「お盆だけ都合が悪いなんて、おかしいだろう」

 

そう夫は怒ります。それでも恵子さんは、「忙しいんだから仕方ないわよ」と自分に言い聞かせていました。しかし、2年が過ぎても帰省の話は一度も出ません。ある日、小学生だった孫の誕生日祝いを宅配便で送ると、届いたのは短いメッセージだけでした。

 

「ありがとう」

 

電話はありません。写真もありません。以前は毎年、お盆になると孫が庭で花火をし、縁側でスイカを食べていました。その習慣は、たった一度の「ホテルに泊まって」というお願いを境に途切れてしまいました。

 

思い切って長男へ尋ねました。「ホテルに泊まって」と言ったことを怒っているのか――返事は「帰省を考えるきっかけにはなった」でした。

 

あのとき、宿泊費も加わると、家族4人で帰省だけで20万円はかかる計算だったといいます。その事実を前に「そこまでして帰省する意味は……」と考えたのだといいます。そして帰省しない代わりに旅行に行ったところ、子どもたちは「今年も旅行がいい」って言うようになったというのです。

 

さらに子どもの成長や部活動、受験などが重なると、別の予定が毎年積み重なり、帰省が絶対的な習慣ではなくなった――というのが理由だったのです。

 

「長期の休みは、お盆あたりと年末年始しか取れないから。俺らも帰省だけで終わるのはもったいないなと思っちゃったんだよね」

 

昨年のお盆、孫たちのために買っておいた花火はまだ物置にしまってあります。

 

「もうしけてしまって、火はつかないかしら」

 

一度なくなった帰省の習慣。再び「毎年お盆は実家へ帰る」ことが習慣になることはないでしょう――そう考える寂しさがこみ上げてくるといいます。