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家族だから「辛くなる距離感」
ある日、美咲さんは保育園から「お子さんが発熱しました」と連絡を受けました。会社を早退し、病院へ向かう途中です。その間にも母からLINEが6件届いていました。
「テレビのリモコンが動かない」
「来られる?」
「まだ?」
病院の待合室でスマートフォンを見るなり、美咲さんは思わず返信しました。
「お願いだから今日は勘弁して」
その直後です。さらに通知が届きます。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「娘なんだから少しくらい面倒を見てよ」
美咲さんは、その画面を見つめたまま和子さんを「ブロック」。それが精いっぱいの自己防衛でした。それから既読は付かず、電話もつながらず――和子さんは何が起きたのか理解できませんでした。
「困ったときは頼っていいって言ったじゃない」
一方、美咲さんは後日、夫にこう打ち明けました。
「母が嫌いになったわけじゃない。でも、毎日『助けて』と言われ続けると耳を塞ぎたくなる」
内閣府の『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、不安や悩みの相談相手に「家族・親族」を挙げる人は92.9%と非常に高く、依存先が家族に偏りやすい実態があります。
しかし、ふだん「気軽に話せる相手」が「いる」人において孤独感(しばしばある・常にある)を感じる割合が2.5%であるのに対し、「いない」人では25.0%と10倍に跳ね上がります。また、ボランティアや趣味などの社会活動に「参加している」人の孤独感は2.1%ですが、「特に参加していない」人では6.5%に上ります。家族以外の多様なつながりを作ることが、孤立を防ぎ良好な家族関係を保つために重要です。
和子さんはその後、地域包括支援センターを訪ね、見守りサービスやサロン活動を利用するようになりました。
毎日の出来事を話す相手が家族だけではなくなったことで、母娘のやり取りは、週に数回程度行われるようになったといいます。