「家族なら助け合って当然」。そう思いつつも、親からの過度な依存に限界を迎えてしまう――親の孤立と子世代の生活苦が交錯する現代、家族だけに負担が偏る構図はなぜ生まれるのでしょうか。ある母娘の事例から、適切な距離感と支援のあり方を考えます。
「『いつでも頼ってね』って言ったじゃない…」〈年金月12万円・74歳母〉、45歳長女から「LINEブロック」の残念理由 ※写真はイメージです/PIXTA

家族だから「辛くなる距離感」

ある日、美咲さんは保育園から「お子さんが発熱しました」と連絡を受けました。会社を早退し、病院へ向かう途中です。その間にも母からLINEが6件届いていました。

 

「テレビのリモコンが動かない」

「来られる?」

「まだ?」

 

病院の待合室でスマートフォンを見るなり、美咲さんは思わず返信しました。

 

「お願いだから今日は勘弁して」

 

その直後です。さらに通知が届きます。

 

「そんな言い方しなくてもいいじゃない」

「娘なんだから少しくらい面倒を見てよ」


美咲さんは、その画面を見つめたまま和子さんを「ブロック」。それが精いっぱいの自己防衛でした。それから既読は付かず、電話もつながらず――和子さんは何が起きたのか理解できませんでした。

 

「困ったときは頼っていいって言ったじゃない」

 

一方、美咲さんは後日、夫にこう打ち明けました。

 

「母が嫌いになったわけじゃない。でも、毎日『助けて』と言われ続けると耳を塞ぎたくなる」

 

内閣府の『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、不安や悩みの相談相手に「家族・親族」を挙げる人は92.9%と非常に高く、依存先が家族に偏りやすい実態があります。

 

しかし、ふだん「気軽に話せる相手」が「いる」人において孤独感(しばしばある・常にある)を感じる割合が2.5%であるのに対し、「いない」人では25.0%と10倍に跳ね上がります。また、ボランティアや趣味などの社会活動に「参加している」人の孤独感は2.1%ですが、「特に参加していない」人では6.5%に上ります。家族以外の多様なつながりを作ることが、孤立を防ぎ良好な家族関係を保つために重要です。

 

和子さんはその後、地域包括支援センターを訪ね、見守りサービスやサロン活動を利用するようになりました。
毎日の出来事を話す相手が家族だけではなくなったことで、母娘のやり取りは、週に数回程度行われるようになったといいます。