首都圏を中心にマンション価格の高騰が加速するなか、かつて主流だった「35年ローン」を超える「50年住宅ローン」を取り扱う金融機関が増えています。事例から、50年ローンのリスクを考えてみましょう。※事例の人物名はすべて仮名です。
「“50年ローン”で家を買ったよ!」→「82歳まで払う気か!」…世帯年収1,000万円・32歳次男の〈7,000万円のマンション〉返済計画に61歳父、呆然 (※写真はイメージです/PIXTA)

32歳息子の衝撃の事後報告

IT企業で働くリュウジさん(32歳)は、年収650万円。同い年の妻と合わせた世帯年収は1,000万円の共働き夫婦です。

 

お盆休み、地方の実家に帰省したリュウジさんは、自身の持ち家のローンを完済している父親のトモオさん(61歳)に対し、こう切り出しました。

 

「父さん、すごくいい物件が見つかってさ。7,000万円の新築マンション、もう契約しちゃったよ!」

 

トモオさんは一瞬言葉を失いながらも、「7,000万円か……。審査は通るかもしれないが、35年ローンだと毎月の支払いは相当な額になるぞ。大丈夫なのか?」と心配そうに問いかけました。

 

すると、リュウジさんは「大丈夫、大丈夫。『50年ローン』で組んだから。返済期間を伸ばしたおかげで月々の支払いはかなり抑えられるし、無理なく返していけるよ」と答えたのです。

 

「 50年ローンだと……!? 完済するのは82歳じゃないか!」トモオさんは思わず叫んでしまいました。

すでに契約した息子に、父が投げかけた懸念

35年ローンですら「定年までに返し終わるか」を気にする世代であるトモオさんにとって、82歳まで続く住宅ローンを契約してきた息子の行動は、正気の沙汰とは思えませんでした。

 

しかし、すでに契約を結んでしまった以上、頭ごなしにいっても始まりません。トモオさんは息子がどのようなリスクヘッジを考えているのか確かめるため、あきれつつも真剣な面持ちで質問を投げかけました。

 

「お前、すでに判を押したんだからいまさらいっても遅いのかもしれないが、よく考えたのか? 50年というと、35年型と比べて、ローンを返せなくなるリスク……たとえば途中で大きな病気になったり、働けなくなったりするようなリスクを含む期間が、圧倒的に長くなる。それについてはどう思っているんだ?」

 

すでに大きな決断をしたリュウジさんの表情には、焦りや不安の色は一切見られませんでした。

 

「俺は、たいていのリスクに対してはなんらかの保険があると考えているよ。そもそも、35年と比較すると確かに長いけれど、現代の価値観で『50年が本当に長いのか?』という疑問が浮かぶんだよね。もし病気が原因でオフィスに通って働けなくなったらフルリモートにしたり、本当に障害状態になったら社会保障を使えたりと、救済措置があるでしょ」

 

息子の考えに納得はできないものの、トモオさんはもう一つ、疑問を投げかけました。

 

「いま、金利が上がっているだろう。50年のあいだにどんどん上がるかもしれないっていう、不安はないのか?」

 

リュウジさんはある有名エコノミストの解説を引き合いに出しながら反論を重ねます。

 

「金利上昇を懸念するせいで、借りないという選択はないよ。エコノミストがYouTubeでいっていたけれど、金利のせいで不動産を買うことを怖がっている人が増えているらしいね。でも、その当時、返済をしている最中に、たとえば1億5,000万円で買った物件が2億円になったりすることなんかを考えると、価格が上がる物件を見越すことができれば得だと思うんだ。デフレとかで下がってしまったら損をするけれど、世界的にインフレは続くという話が出ているなか、物件価格が上昇する可能性は高いんじゃないかな」

 

息子の言い分を聞いたトモオさんですが、正直なに一つ納得できず、不安は募るばかりです。