「家族なら助け合って当然」。そう思いつつも、親からの過度な依存に限界を迎えてしまう――親の孤立と子世代の生活苦が交錯する現代、家族だけに負担が偏る構図はなぜ生まれるのでしょうか。ある母娘の事例から、適切な距離感と支援のあり方を考えます。
「『いつでも頼ってね』って言ったじゃない…」〈年金月12万円・74歳母〉、45歳長女から「LINEブロック」の残念理由 ※写真はイメージです/PIXTA

「困ったら連絡して」が始まりだった

「いつでも頼ってね。近くにいるんだから」

 

そう言ってくれた長女の言葉を、佐藤和子さん(74歳・仮名)は何度も思い返していました。5年前に夫を亡くしたあと、家賃4万円台の団地に移り住みました。

 

年金は月12万円ほど。固定費を下げたことで、普段の生活費は年金の範囲内で収められるようになりました。ただ、長く住んでいた地域を離れたため、近所に知人はいません。一日中誰とも話さずに終わる日が増えていました。

 

そのようななか、唯一の話し相手といえるのが、車で40分ほどのところに住んでいる長女の美咲さん(45歳・仮名)。当初は週末に孫の顔を見せに遊びに行っていました。ちょうどそのころ、和子さんはLINEを覚えます。

 

「今日、少し頭が痛いの」

「スーパーでお米が高かった」

「隣の人の物音が気になる」

 

最初は1日に1通程度でした。美咲さんも「無理しないでね」「病院へ行った?」と返信していました。しかし、そのやり取りは少しずつ増えていきます。朝の「おはよう」から始まり、昼には買い物の報告、夜には眠れないという相談。
返信が30分ないだけで電話をかけるようになりました。

 

「既読なのに返事がないけど、何かあった?」

「忙しいって言っても、ひと言くらい返せるでしょう」

 

和子さんにとって、それは「家族との普通の会話」でした。

 

一方、美咲さんの日常は違いました。共働きで、子どもは小学生と保育園児の2人。月々11万8,000円の住宅ローンも抱えています。世帯年収は約850万円ありますが、教育費や物価高の影響で、2馬力とはいえ余裕があるとはいえません。

 

厚生労働省『2025年(令和7年)国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯の1世帯当たり平均所得金額は857.3万円となっています。美咲さん世帯の約850万円はこれと同水準ですが、現役世代の家計は決して楽ではありません。同調査では、児童のいる世帯の平均借入金額が1,226.2万円に上り、全世帯平均(362.5万円)の3倍以上を占めています。

 

さらに、生活意識において「大変苦しい(27.6%)」「やや苦しい(33.9%)」を合わせた「苦しい」と回答した児童のいる世帯の割合は61.5%と、半数を大きく超えています。教育費や住宅ローン、物価高に直面する子育て世帯の家計がいかに切迫しているかがデータからも窺えます。

 

仕事中も母から通知が届きます。昼休みにスマートフォンを開くと未読が12件。

 

「テレビが映らない」

「宅配便が来ない」

「今日はなんとなく息苦しい」

 

急いで電話をすると、「もう大丈夫」と言われることも少なくありませんでした。本当に緊急なのか、寂しくて連絡しているだけなのか。その判断を毎日のように求められる生活が続きました。