(※写真はイメージです/PIXTA)
老後のための住み替え
「ここで安心して暮らせると思ったんです」
高橋美和子さん(68歳・仮名)。夫を3年前に病気で亡くしたあとも、東京都郊外にある築40年近い戸建てで一人暮らしを続けていました。しかし、庭木の手入れや外壁の補修が年々負担になっていきます。最寄り駅までは車を利用して15分。徒歩ではとてもいけない距離にあります。買い物や通院も、将来を考えると不安がありました。
思い切って戸建てを売却したのは67歳のときです。売却代金と預貯金を合わせ、ローンを組まずに購入したのが、駅から徒歩5分の築28年の中古マンションでした。オートロック付きでエレベーターもある。徒歩圏内にはスーパー、総合病院、銀行があります。
「車を手放しても生活できる」
それが住み替えを決めた理由でした。
内閣府『高齢社会に関する意識調査(高齢期の住み替えについて)』によると、高齢者が住み替えを意識する理由は、女性において「健康・体力面での不安」(27.0%)が最も多く、次いで「自身の住宅が住みづらい」(20.5%)、「買い物が不便」(12.2%)、「交通の便が悪い」(11.0%)と続きます。また、住み替え先に期待することとしても、全体で「買い物が便利なこと」が1位、「医療・福祉施設が充実していること」が2位、「交通の便が良いこと」が3位となっています。美和子さんの選択は、まさにこれら多くの高齢女性が抱く不安や期待をそのまま反映したものと言えます。
収入は遺族年金と自身の年金を合わせた月約15万円。一方で、マンションの固定費は、管理費1万2,000円、修繕積立金1万4,000円、固定資産税を月割りにすると約8,000円。戸建ての売却後も預貯金は約1,200万円残りましたが、その多くは介護や医療費の備えであり、できるだけ取り崩すことはせず、年金のなかでやりくりをするよう心掛けていたといいます。
地方の農家の出だという美和子さん。結婚後、すぐに前に住んでいた戸建てに引っ越したので、共同住宅で暮らすのはこれが初めて。管理費や修繕積立金が何なのか、いまいちよく分かっていなかったといいます。もちろん、購入前に宅地建物取引士から重要事項説明を受けていますが、専門用語が多く、「積立金は毎月払うもの」という程度の理解で終わっていました。
「築年数は少し古いけれど、管理もしっかりしているように見えましたし、不安はなかったので……」
入居して数ヵ月。顔と名前が一致する住民はほぼおらず、管理組合の事情を知る機会もありませんでした。