都心部を中心にマンション価格の高騰が続くなか、住宅ローンの返済プランもかつてない変化を遂げています。近ごろ注目を集めるのは、「バルーン型の住宅ローン」。月々の返済を抑えられる代わりに、返済最終日に元本の50%を一括で支払うという、物件の売却を前提とした仕組みから、SNS上では自動車の残価クレジット(残クレ)になぞらえて「残クレ住宅ローン」と呼ぶ声も。事例をみていきましょう。※事例の人物名はすべて仮名です。
「家を買うよ!“残クレ住宅ローン”で」→「ちょっと待て!」…世帯年収1,800万円・30歳息子の〈都内1億円のマイホーム〉驚愕返済プランを、60歳父が必死に止めたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「1億円の家を月20万円で?」息子の報告と、父の困惑

都内の大手企業に勤める息子のシュンジさん(30歳)は、昨年結婚した妻との世帯年収が1,800万円に達する、いわゆるパワーカップルです。

 

ある週末、定年を数年後に控えた父親のトシヲさん(60歳)のもとを訪れたシュンジさんは、夕食の席で「1億円の新築マンションを買うことにした!」と報告しました。

 

1億円という金額にトシヲさんは一瞬耳を疑いましたが、「いまの年収なら買えないこともないかもしれないが、毎月の返済は相当な額になるだろう。大丈夫なのか?」と、息子の考えをじっくり聞くことに。

 

するとシュンジさんは「大丈夫だよ、父さん。いまは自動車の残クレみたいな新しい住宅ローンがあるんだ。1億円借りても、俺たちの毎月の支払いは20万円程度で抑えられるから、手取りを考えたら余裕だよ」と答えたのです。

 

「1億円借りて、月々20万円?」――昔ながらの住宅ローンしか知らないトシヲさんは首をかしげながらも、息子がなぜそこまで強気なのか、まずはその理由に耳を傾けることにしました。

「銀行が通すんだから安全」息子のロジック

シュンジさんは、自分がなぜその選択に至ったのか、現在の不動産市況とローンの合理性を父に説明しはじめました。

 

「いまって都内の新築マンションの平均価格が1億円を突破している時代なんだよ。だからそれに合わせて、50年ローンとか、月々の返済を抑えられる代わりに将来の売却を前提とした『バルーン型』っていう新型住宅ローンが登場しているんだ」

 

トシヲさんが「将来売る前提のローンなんて怖くないのか?」と尋ねると、シュンジさんはこう続けます。

 

「『絶対にここに住みたい』っていう物件が見つかれば、バルーン型でも十分にメリットはあると思っているし、俺自身あまり抵抗はないよ。だって、銀行側だって将来売れなさそうな物件には、そもそもローンを組ませないだろうからね」

 

さらにシュンジさんは、浮いた目先の手元資金の使い道についても触れました。

 

「毎月の返済額が減れば、その分NISAに突っ込むことができる。家という資産も手に入れられて、資産運用も加速させられて、一石二鳥じゃないか」

 

息子の主張は一見、時代の波に乗った合理的な判断のようにも聞こえました。「銀行が融資してくれるなら資産価値は保たれるはず」と信じ、毎月の返済額を抑えて、理想のマイホームを手に入れられるという算段です。