「いつか憧れの地でセカンドライフを」――。そんな夢を抱き、退職金をつぎ込んで軽井沢への移住を果たした60代夫婦。豊かな自然に囲まれた理想の暮らしを手に入れたはずの2人でしたが、わずか5年後、住み慣れた東京へ戻る決意を下します。シニアの移住にまつわる意外な落とし穴について見ていきます。
「軽井沢に住んでいる意味、あるのかな…」60歳定年夫婦、退職金2,000万円でかなえた夢の移住だったが、5年後に「東京に戻る決意」をした「まさかの理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

軽井沢ライフをあっさり手放した理由

孫がかわいいことも分かっています。娘や息子たちが必死に働いていることも理解しています。それでも、ある日ふと疑問が浮かびました。

 

「何のために軽井沢に家を買ったんだろう……」

 

軽井沢の暮らしが嫌になったわけではありません。むしろ大好きです。近所付き合いも良好だし、食べ物も美味しいし、環境も良いし――お金の心配だってありません。

 

「しかしあのまま東京で暮らしていたほうが、のんびり過ごせていたのではないか」、そんな思いが日に日に強くなっていったといいます。

 

「試しに家を査定してもらったんです。そしたら、最近はさらに人気が高まっていて、私たちが購入したときよりも高く売れるというじゃないですか。だから何も迷うことなく、東京に戻ることにしたんです」

 

今は、長男家族と長女家族、それぞれドア・トゥ・ドアで1時間で行ける賃貸マンションで暮らしています。共働きの子ども家族から、毎週のようにヘルプ電話が入り、そのたびに駆けつけます。それでも「孫の成長が近くで見られる」「子どもたちが親として成長している姿も感慨深い」と、今の生活も気に入っているといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、過去1年間に親から「孫の世話」の支援を受けた有配偶女性の割合は、親と「遠居」の場合は20%前後であるのに対し、「近居」の場合は30%台(父親35.8〜37.4%、母親30.9〜37.3%)と高くなっています。

 

さらに、いずれの親とも同居していない場合、妻方・夫方のいずれか「近いほうの母親」との居住距離が「60分未満」の割合は72.1%に上ります。山本さんご夫婦のように、共働きの子育て世代をサポートするため、互いに行き来しやすい近距離に住んで助け合うライフスタイルは、現代の親子関係におけるリアルな実態を色濃く反映しているといえます。

 

「軽井沢での暮らしが恋しくないといえば嘘になります。ただ今は今で充実しているので、悔いはありません」