「マイホームを持ってこそ一人前」という世間の常識に背を向け、あえて築古アパートに住み続ける48歳独身男性。十分な資産がありながらも世間体にとらわれない選択に対し、周囲からは冷ややかな声も上がります。それでも揺るがない理由と、葛藤の末に見出された驚きの「境地」とは。男性の本音から、住まいの考え方についてみていきます。
「高い金を払ってまで“家を買う”意味がわからない」…〈年収650万円・金融資産8,000万円〉48歳独身男性、〈築32年・家賃6万円〉の木造アパートでたどり着いた境地 ※写真はイメージです/PIXTA

住宅購入…合理的な選択に思えない

長谷川裕介さん(48歳・仮名)は、東京都内の中堅メーカーで管理職として働き、年収は約650万円。新卒から25年以上、同じ会社に勤め続けています。

 

現在暮らすのは、駅から徒歩15分ほどの住宅街にある築32年の木造アパートです。間取りは1DK。家賃は月6万円。風呂とトイレは別ですが、外観に新しさはありません。知人を招くこともほとんどなく、「住めれば十分」という考えで住み続けています。

 

毎月の手取りは約41万円。家計は極めて単純でした。

 

家賃:6万円

食費:4万円

水道光熱費:1万2,000円

通信費:8,000円

保険料:1万5,000円

趣味・交際費:4万円

その他生活費:4万円

 

毎月の支出は、およそ22万円。残る約19万円は、NISAやiDeCoを含めた投資信託と現金預金へ積み立てています。賞与もほぼ使いません。

 

気づけば金融資産は8,000万円を超えていました。住宅ローンはありません。自動車も所有していません。結婚歴もなく、子どももいません。人生の三大出費といえば、家、教育、保険と言われていますが、いずれも関係のない長谷川さんは、「普通に働いて、余ったお金は貯金して、ちょっと資産運用しているだけ」と話します。

 

なかでも無駄だと思っているのが「家」だといいます。

 

「住宅ローンって、4,000万円とか5,000万円を35年かけて返す契約ですよね。しかも金利も固定資産税も修繕費もかかる。どう考えても、自分には合理的な選択には思えない」

 

国土交通省『令和6年度 住宅市場動向調査』によると、民間賃貸住宅を選択した理由として最も多いのは「家賃が適切だったから」で55.5%を占めています。三大都市圏における集合住宅の平均月額家賃は7万4,656円、中央値は6万5,000円となっており、長谷川さんはこれよりもさらに低い家賃で生活コストを抑えていることがわかります。

 

また、同調査では賃貸住宅居住者のうち「1人」世帯が41.1%に上ります。長谷川さんのように、持ち家というステータスにこだわらず、多額のローンや維持費という負債リスクを避けて手元資金を資産運用に回すという合理的な選択は、昨今の単身世帯におけるひとつのリアルな実態を反映しているといえます。

 

周囲は理解しませんでした。

 

「その年でアパート暮らし?」

「いい会社なんだからマンションくらい買えば?」

「独身だから金が余ってるだけじゃない?」

 

何度も同じ言葉をかけられてきました。それでも本人は一切気にしていません。

 

「家に帰っても寝るだけ。そこにお金をかける必要があるのだろうか?」