(※写真はイメージです/PIXTA)
「5年間の再雇用」を耐え抜き、ようやく手にした夫婦の約束
大手メーカーで60歳の定年を迎えた林輝明さん(65歳・仮名)。年金受給が始まる65歳までの貯蓄減少を恐れ、再雇用で5年間働き続けました。
現役時代、出張や残業続きで妻の和子さん(63歳・仮名)には寂しい思いをさせてばかりでした。家のこと、子どものことも、すべて和子さんにお任せ。だからこそ、完全に仕事を辞めたときには、贅沢な時間をプレゼントしたいと考えていたのです。
「仕事を辞めたら、地中海クルーズなんてどうだ?」
以前、テレビで紹介されているのを、和子さんは目を輝かせながら見入っていました。そのことを覚えていた輝明さんからの提案でした。和子さんは「素敵、これまでの苦労も吹き飛んじゃう」と満面の笑みで応えてくれました。
定年→再雇用のタイミングで給与が半減し、正直プライドが傷つくこともありました。それでも踏ん張れたのは、この夢があったからです。2,500万円の退職金には1円も手をつけず、長かった現役生活に終止符を打つ日がやってきたのです。
しかし、仕事を辞め平穏な時間を過ごしていた輝明さんは、元同僚の一言で心が揺らぎます。
「退職金はまさか普通預金に入れたままじゃないよな。今はインフレで現金の価値は下がる一方だ。何もしないこと自体がリスクだぞ」
金融経済教育推進機構の『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)』によると、60代の二人以上世帯における金融資産の平均保有額は2,683万円です。その内訳は、預貯金が1,087万円(約41%)である一方、株式に629万円、投資信託に270万円など、多くの世帯が何らかの投資を行っている現実があります。
誰もが投資をしているわけではありませんが、輝明さんの耳には「現金のままでは目減りする」という言葉が警告のように響きました。
「このままだと地中海クルーズに行く余裕がなくなるかもしれない……」
老後資金への漠然とした焦りが生まれました。