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長男家族が帰ったあとの本音
そして5日目の夕方。長男一家を駅まで送り届けると、健一さん夫妻は家へ戻りました。玄関を開けた瞬間、静けさが家を包み込みます。洗濯物を片づけ、客用布団をしまい、冷蔵庫の整理を終えると時計は午後9時を回っていました。
健一さんはソファに腰を下ろし、大きく息をつきました。そして妻だけに、小さな声で言いました。
「1年ぶりに会えてうれしい。でも……正直、きつかったな」
和子さんは少し間を置いて答えます。
「私も同じこと思ってた。でも、あの子たちには絶対言えない」
この5日間のレシートを整理すると、支出は予想以上でした。食費が約5万4,000円。外食2回で2万2,000円。テーマパークに遊びに行った際の入園料や食事代、お土産代もすべて負担しました。その額、実に12万円――結局、健一さんの1カ月の年金受給額を超える支出となったのです。
健一さんは「年に1回のことだから」と自分に言い聞かせる一方で、「あと何年、同じように迎えられるだろう」と不安が押し寄せます。今のところ家計に赤字はないものの、同じことが来年も言えるとは限りません。いつまで夫婦ともに元気でいられるかという不安もよぎります。
厚生労働省『2025年(令和7年)国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336.1万円であり、全世帯平均の575.2万円を大きく下回っています。さらに、日々の生活について「大変苦しい(21.0%)」「やや苦しい(31.1%)」と回答した高齢者世帯の割合は合計52.1%と、半数以上に上ります。限られた年金収入などでやりくりするなか、いくら可愛い孫や子のためとはいえ、一度に十数万円の出費が重なることは、将来の家計への不安を増幅させる切実な問題といえます。
孫の笑顔は何よりのエネルギーですが、無理をして持続できなくなっては本末転倒。「たまの帰省」を互いに笑顔で終えるために、今後は財布も体面も張り合わず、等身大で迎える勇気が必要なのかもしれません。