金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査』によると、老後不安を訴える人は8割ほど。その不安を解消するためにコツコツと資産形成を続けるべきですが、意外とその進行状況は家族でも共有されていないもの。あるひと組の夫婦の事例から、その実態をみていきます。
「小遣い月3万円」「年収800万円」58歳夫、定年直前に絶句…妻が差し出した預金通帳、驚愕の中身「俺が会社に捧げた35年は、なんだったんだろう?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「家計が苦しい」と信じた35年

健一さんは地方のメーカー勤務。大卒で就職し、まずは営業職、30代以降は管理職を経験。休日出勤も珍しくありませんでした。40代後半からは年収800万円前後を維持し、月45万〜50万円ほどを手にしていました。

 

しかし、健一さんが自由に使えるお金は月3万円。住宅ローンは月8万5,000円。食費や光熱費、通信費、子どもの教育費など生活費は月35万円前後。長男の大学進学時には年間約120万円の学費負担もありました。

 

「妻からは『今は教育費がかかるから』『老後のために節約しないと』と言われてきました。だから、自分も我慢するのが当然だと思っていたんです」

 

家計のことはすべて由美さんに任せていました。給与が振り込まれる口座ごと管理し、その中から月3万円のお小遣いをもらう。忘年会シーズンなどはお金が足りなくなるので、「頼む!」とお願いすると、しぶしぶ1万円札を渡してくれる――そのようなやり取りが半ば恒例だったので、健一さんは「妻はきちんと家計管理をしてくれているが、家に余裕はない」と思っていたのです。

 

実際には違いました。由美さんは、結婚当初からしっかりと家計簿をつけ、余ったお金を少額ずつ積み立てていました。1990年代後半から始めた投資信託への積立投資は、毎月3万円程度。子どもの教育費が落ち着いた50代以降は、月10万円以上を投資に回していました。

 

「コツコツと資産運用してきたので、それなりにお金はありました。最近の株高で、一気に増えた感があります。資産運用のことは、主人には言ったことはありません。言ったら『お金あるなら働かなくてもいいじゃん』なんて、言い出すことはわかっていましたから」と由美さん。

 

資産運用はうまくいっていましたが、いつ、何があるかはわからないので、健一さんには定年まではしっかりと働いてほしかったと由美さん。ただ定年以降、働くかどうかは本人次第。そのため、このタイミングで資産状況を伝えようと思ったといいます。

 

「定年を迎えたとき、仕事を辞めることも続けることも、きちんと選択できる。そのような状況を作ってあげられたらと思って、今まで資産運用してきたんです」

「私が毎日会社で頭を下げて、体調が悪くても出勤していた理由は、家族のためでした。でも、実はお金は足りていた。そう考えると、複雑でした」

 

老後の不安は大きく軽減されました。60歳の定年で仕事を辞めても、きっと大丈夫。しかし、仕事を辞めて何かすることはあるだろうか――。

 

「本当、よくできた妻をもって幸せです。おかげで、定年後も働くのかどうするのか――大きな問題を抱えることになりました」