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「家計が苦しい」と信じた35年
健一さんは地方のメーカー勤務。大卒で就職し、まずは営業職、30代以降は管理職を経験。休日出勤も珍しくありませんでした。40代後半からは年収800万円前後を維持し、月45万〜50万円ほどを手にしていました。
しかし、健一さんが自由に使えるお金は月3万円。住宅ローンは月8万5,000円。食費や光熱費、通信費、子どもの教育費など生活費は月35万円前後。長男の大学進学時には年間約120万円の学費負担もありました。
「妻からは『今は教育費がかかるから』『老後のために節約しないと』と言われてきました。だから、自分も我慢するのが当然だと思っていたんです」
家計のことはすべて由美さんに任せていました。給与が振り込まれる口座ごと管理し、その中から月3万円のお小遣いをもらう。忘年会シーズンなどはお金が足りなくなるので、「頼む!」とお願いすると、しぶしぶ1万円札を渡してくれる――そのようなやり取りが半ば恒例だったので、健一さんは「妻はきちんと家計管理をしてくれているが、家に余裕はない」と思っていたのです。
実際には違いました。由美さんは、結婚当初からしっかりと家計簿をつけ、余ったお金を少額ずつ積み立てていました。1990年代後半から始めた投資信託への積立投資は、毎月3万円程度。子どもの教育費が落ち着いた50代以降は、月10万円以上を投資に回していました。
「コツコツと資産運用してきたので、それなりにお金はありました。最近の株高で、一気に増えた感があります。資産運用のことは、主人には言ったことはありません。言ったら『お金あるなら働かなくてもいいじゃん』なんて、言い出すことはわかっていましたから」と由美さん。
資産運用はうまくいっていましたが、いつ、何があるかはわからないので、健一さんには定年まではしっかりと働いてほしかったと由美さん。ただ定年以降、働くかどうかは本人次第。そのため、このタイミングで資産状況を伝えようと思ったといいます。
「定年を迎えたとき、仕事を辞めることも続けることも、きちんと選択できる。そのような状況を作ってあげられたらと思って、今まで資産運用してきたんです」
「私が毎日会社で頭を下げて、体調が悪くても出勤していた理由は、家族のためでした。でも、実はお金は足りていた。そう考えると、複雑でした」
老後の不安は大きく軽減されました。60歳の定年で仕事を辞めても、きっと大丈夫。しかし、仕事を辞めて何かすることはあるだろうか――。
「本当、よくできた妻をもって幸せです。おかげで、定年後も働くのかどうするのか――大きな問題を抱えることになりました」