(※写真はイメージです/PIXTA)
定年前、突然、妻から渡された通帳
「これを見てほしい」
会社員の佐々木健一さん(仮名・58歳)。妻の由美さん(仮名・56歳)から差し出された通帳を見て言葉を失いました。そこに記されていた預金残高は、想像していたものとは大きく違っていたのです。
「私はずっと、家にお金がないと思っていたんです。この年になっても、毎月の小遣いは3万円。外食もほとんどしない。欲しいものがあっても我慢してきた。なのに……」
健一さんが通帳で確認した金額は、約3,000万円でした。さらに妻名義の投資口座には、投資信託や株式などを合わせて約5,000万円の金融資産がありました。夫婦合わせた金融資産は約8,000万円。定年まであと2年を迎えようとしていますが、現在の年収は約800万円。住宅ローンも残りわずか。これまでを振り返ると可もなく不可もなくやってきたという自負がありますが、これから迎える老後については、不安でいっぱいだといいます。
「物価高はいつまで続くんだろう、年金で生きていけるだろうか……考えても、考えても、不安ばかりが先行していました」
佐々木家の金融資産8,000万円は、同年代のなかでも圧倒的な額です。金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)2025年』によると、50代世帯の金融資産保有額(非保有含む)は平均1,908万円、より実態に近い中央値は700万円にとどまります。
一方で、それだけの資産があっても老後不安は消えません。同調査で老後の生活が「心配である」と答えた50代は84.0%に上り、その理由に「生活の見通しが立たないほどの物価上昇」を挙げた人は31.5%に達します。十分な蓄えがあっても、先先行不透明なインフレへの恐怖を多くの人が抱えていることがわかります。
「えーって感じですよね。こんなにお金があるなら、将来を不安に思うことなんてなかった。私が35年間、会社に全部を捧げてきた時間は、なんだっただろう。必死になって働く必要なんてなかったと思いました」