週1回の電話「元気?」「元気よ」の代償
健一さんは、週1回、和子さんに電話をしていました。 「元気?」 「元気よ」 その程度のやり取りだったといいます。それで安心していたのです。しかし、近所への聞き取りを進めると、さらに驚く話が出てきました。
「最近は同じ物を何度も買っていましたよ」
「ごみの日を忘れることが増えていました」
「夜中に家の前を歩いているのを見ました」
誰も決定的な異変とは思わず、声をかける程度で終わっていた形でした。
健一さんは地域包括支援センターへ相談。職員が家の様子を確認したのち、まずは認知機能の評価を勧められました。結果は、軽度認知障害が疑われる状態でした。
「もっと早く相談していれば」
健一さんは思わず漏らしました。すると職員は静かに答えます。
「多くのご家族が同じことをおっしゃいます。電話では、なかなか分からないんですよ」
実際、和子さんは電話になると受け答えだけはしっかりしていました。一方で、服薬はできておらず、通院日も忘れています。賞味期限切れの食品を口にし、洗濯機には濡れた衣類が何日も入ったままでした。生活全体が少しずつ崩れていたのです。
介護認定の申請後、週2回の訪問介護と配食サービスの利用が始まりました。生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)(2024年度)』によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計が平均47.2万円、月々の費用が平均9.0万円。ただ健一さんの場合、帰省するには時間もお金もかかります。何度も足を運ぶことはできません。
「このまま、母を一人暮らしさせるわけにはいかない。施設も探していかないと……」