(※写真はイメージです/PIXTA)
嫁の先回り
ランドセルのパンフレットが届いたことをマナさんに伝えると、彼女はこう答えました。
「お義母さんが孫のランドセルについてあれこれ悩まれるといけないと思い、私のほうで一番人気の限定モデルを先着順で予約しておきました! お二方からの最高のプレゼント、子どももきっと大喜びします! お支払いは同封の用紙で大丈夫ですので、よろしくお願いいたしますね」
驚いたマツさんは、なにもいえません。そのあとも嫁はなにかいっていたようですが、耳に入りませんでした。電話を切ると、長男のショウゴさんに何度も電話をかけますが、やはり出ません。夜になってようやく折り返しがくると、話をすることができました。すると、「マナも悪気があってやったわけじゃないし、せっかく予約してくれたんだからさ。お祝いなんだから、それくらい払ってやってよ」とショウゴさんはいい、実家の懐事情をまったく理解していない暢気な言葉に頭を抱えます。
月18万円の年金で暮らす高齢夫婦にとって、18万円の突発的な出費は、ちょうど1ヵ月分の生活費が丸々吹き飛ぶことを意味します。「お祝いは気持ちの範囲で」と考えていたマツさんたちの計画は、嫁の独断による先回りによって根底から覆されてしまいました。
「親世代は余裕がある」という勘違い
40歳を過ぎてようやく家庭を持った息子夫婦への安心感は、皮肉にも「親の懐事情を想像できない子どものままだった」という冷徹な現実によって打ち砕かれました。子育て世代の経済的な大変さは事実だとしても、「親世代は年金をもらっているから余裕があるはずだ」という子ども側の勝手な思い込みは、時に悪意のない刃となって高齢の親を追い詰めます。
孫への可愛さや身内の世間体を優先して、一度でもこの「18万円の請求書」に応じてしまえば、若者側の「実家に頼ればなんとかなる」という甘えを肯定することになりかねません。現役時代にどれほど真面目に蓄えても、身内のノンキな経済感覚に付き合っていては、老後資金などあっという間に底をついてしまうでしょう。
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