(※写真はイメージです/PIXTA)
露呈した地方のインフラの脆さ…「もう耐えられない」妻の決別宣言
そんな不満が蓄積していたある日。梅雨の晴れ間にマサオさんが自宅の周りを掃除している最中に、滑りやすくなっていた庭の石段に足を滑らせ、尻もちをつき腰の骨を折ってしまいます。
自力で歩けなくなったため、ケイコさんは慌てて救急車を呼びました。しかし、市街地から離れた山間部のため救急車が到着するまでに30分近くかかり、さらに受け入れ先の総合病院は隣の市で、車で1時間も離れた場所でした。
「もしこれが命にかかわる病気だったらと思うと、ゾッとしました。私は運転できないし、タクシーもすぐには来ません。この先、どちらかが重い病気になったとき、こんな不便な場所でどうやって生きていけばいいのか……」
この一件でケイコさんは、「こんな不安な毎日はもう耐えられない、やっぱり東京での暮らしのほうがよかった」とマサオさんに泣きながら訴えました。
ケイコさんの突然の言葉に、マサオさんはショックを受けたといいます。自分の憧ればかりを優先し、不便さや健康リスクから目を背けていたことに、ようやく気づいたのです。
夫婦の話し合いの結果、マサオさんはわずか2年で移住先の家を手放す決断を下しました。物件の売却損や引っ越し費用などで、結果的に約500万円もの老後資金を失いました。現在は、関東近郊の駅やスーパーが徒歩圏内にある家賃11万円の賃貸マンションに引っ越し、生活を立て直している最中だといいます。
[参考資料]
内閣府「令和7年版高齢社会白書」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」