キャリアアップを目指す人、水面下で転職活動を進める人、仕事よりプライベートを優先する人……。今の職場には、価値観もキャリア観も大きく異なる社員が集まっています。中間管理職にとって、こうした多様な部下をまとめるのは簡単ではありません。どれだけ指導に熱を入れても、部下の心に届かなければ意味がないからです。本記事では、竹下友浩氏の著書『最大の成果を生み出すチームビルディング メンバー育成に悩む中間管理職のあなたへ』(ごきげんビジネス出版)より2社の事例を通じて、チームの生産性向上と人材定着に結びついた「上司の指導方法」を紹介します。
上司の「ああしろ」「こうしろ」を封印したら離職率40%減少…上司にアドバイスを求めない〈20代Z世代の部下〉が本当に求めていること

令和の組織に欠かせない「心理的安全性」の定義

スタンフォード大学のエイミー・エドモンソン教授は、心理的安全性を「チーム内で発言・挑戦・失敗をしても人間関係が脅かされないと感じられる状態」と定義しました。

 

話している相手の意見を途中で遮らず最後まで聴く。「それは違う」ではなく「そう考える理由を教えて」と返す。こうした小さな行動が「安心感」を生みます。個を尊重する育成は、単なるやさしいマネジメントではありません。むしろ、結果を出すための最短ルートといえるでしょう。

週1回の「1on1」でミス約20%減…メーカー製造部の事例

対話を増やしたことによる改善例には、次のようなものもあります。あるメーカーの製造部の中間管理職のAさんは、5名のチームを率いています。以前は、「上司や先輩の仕事を見て覚えろ」という指導を行っていました。しかし、最近の若手との関係に悩んでいました。「言ったとおりに動いてくれない」「何を考えているかわからない」。

 

そこでAさんは、週1回10分程度の1on1面談を始めることにしました。話すテーマは「今、困っていること」「今週できたこと」「次に挑戦したいこと」です。

 

半年後、若手の一人がこう言いました。「最近、仕事を任せてもらえてうれしい。前より自分の意見が言いやすくなった」

 

そのとき、チームの改善提案数は前年比約2.5倍、生産ラインの不良率は約20%減少していたのです。Aさんは、指示を減らし対話を増やすことで、チームが勝手に動き出すことに気づいたと言います。

 

この事例で注目すべきは、Aさんが面談のテーマを「今、困っていること」「できたこと」「次に挑戦したいこと」に設定した点です。若手自身に現状を振り返らせ、自らの言葉で未来を語らせる機会を継続的につくりました。自分で考え抜いたことが上司に認められ、仕事に反映される。この「役に立っている」という成功体験の積み重ねが、若手の考える力を養うと同時に、「もっと貢献したい」という自発的なモチベーションを引き出す原動力にもなったのです。

 

現代の若手は、「自分ならではの貢献」を通じて認められることを重視する傾向があります。自分の意見が尊重される環境があれば、メンバーには自然と当事者意識が芽生え、結果として改善提案の増加や不良率の低下といった、実効性のある成果が生まれます。

 

令和時代の中間管理職に求められるマネジメントは、チームで最大の成果を出すために、メンバーの個を尊重し、その人に合わせた成長を支援すること。そして、自分で考え自分で行動するメンバーを育てるため、メンバーの思考を引き出すこと。その土台となる心理的安全性が高い職場づくりをすることだといえるのです。

 

 

竹下 友浩

マネジメント研修講師/生成AI研修講師&コンサルタント

 

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