やる気が見えない若手と、教え方に迷う上司
これまでの日本企業の主な育成方法は、上司が部下に対して現場で実践する姿を見せ、模倣しながら技術と姿勢を身につける方法でした。この方法は、終身雇用制度が機能し、メンバーが同じ職場に長期間勤める時代には非常に有効でした。上司と部下が共有する価値観や成功モデルが明確だったからです。
しかし、21世紀に入り、テクノロジー・働き方・価値観が急激に変化しました。経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(2023)」によると、企業が人材育成において課題と感じる点の第1位は「従業員の意欲・主体性の欠如(約58%)」、第2位が「上司・指導者の指導スキル不足(約45%)」となっています。
つまり、「やる気がない若手」と「どう教えていいかわからない上司」が互いに迷いながら仕事をしている現状が浮かび上がっているのです。これには3つの時代背景があります。
転職時代、上司の「命令形」指導は共感を得にくい
総務省統計局「就業構造基本調査(2022)」によると、20代~30代の約45%が「副業・転職を前向きに検討している」と回答しています。これまでは「会社がキャリアを守ってくれる」時代でしたが、今は「自分のキャリアは自分で選ぶ」時代です。つまり、これまでの「会社のやり方に合わせろ」「まず10年頑張れ」という指導は、共感を得にくくなっています。
昭和・平成初期の時代には、「昇進したい」「給与をアップしたい」「会社へ貢献したい」が共通のモチベーションでした。しかし、今は違います。「仕事を通じて成長したい」「ワークライフバランスを大切にしたい」「自分の意見を尊重してほしい」と考える人が増えているのです。このようななかでは、これまでのような「こうしなさい」という指導は、響かないどころか反発を生むこともあります。
これまでは「仕事を覚えるまでは遅くまで残業して当然」という考えが主流でした。上司が厳しく指導すれば、それが「愛のムチ」として受け止められたのです。
しかし、現代では「早く帰ってプライベートに時間を使いたい」と考えることが自然になるなど、部下が働く目的や価値観が多様化しました。仕事への意欲をどこで表現するのかが、大きく変わってきているのです。また、上司の厳しい指導は、「上司の価値観を押し付けられた」と受け止められてしまうこともあります。
