(※写真はイメージです/PIXTA)
節約のつもりの行動だった…
和子さんにとって、買い物は贅沢ではありませんでした。むしろ節約の一環だったといいます。
「ポイント5倍の日を狙っていたの」
「クーポンが出るまで待って買っていたし」
「定価ではほとんど買ってないのよ」
本人には浪費の自覚はありません。購入履歴を確認すると、「送料無料まであと1,000円」「あと少しでポイント倍率アップ」といった理由で追加購入した記録も少なくありませんでした。
収納用品を買うために収納用品を買い、使い切れないサプリを追加購入し、似たような衣類をポイント還元日に注文する――。そうした行動が積み重なっていたのです。
総務省『家計消費状況調査』によると、2025年、65歳以上のおひとり様女性の4分の1がインターネットを利用した注文を行い、平均月3.5万円を使っています。インターネットの利用はまだ少数派とはいえ、ネット通販は高齢者にも確実に浸透しているといえるでしょう。
その分、トラブルも増加。『令和8年版消費者白書』によると、2025年、消費生活相談件数の33.0%が65歳以上の高齢者からのものです。相談された商品・サービスを見ていくと、健康食品や基礎化粧品が他の世代よりも多くなっています。
和子さんの場合、本人が納得して購入しており、浪費という意識はなかったものの、「得をしたい」という気持ちが、結果として大きな支出につながっていました。
父の死後、買い物が生活の一部になった
なぜここまで買い物が増えたのでしょうか。背景には生活環境の変化がありました。
父が亡くなって以降、一人で過ごす時間が増えていきました。年齢とともに友人との交流も減り、外出機会も以前ほど多くありません。そんななかで、スマートフォンを見る時間が長くなったといいます。
「おすすめ商品が出てくるでしょう。見ていると、つい欲しくなるのよ」
さらに購入後にはポイント付与の通知が届きます。その数字を見ることも楽しみの一つになっていました。
「今日は3,000ポイント増えた」
「今月は1万ポイント超えた」
そうした達成感が次の買い物につながっていたといいます。
一方で田中さんは、母の変化にも気づいていました。同じ話を繰り返したり、支払日を忘れたりすることが増えていたのです。後日受診した医療機関では、認知機能の低下が見られるとの指摘も受けました。
「買ったこと自体を忘れていた商品もありました」と田中さんは話します。
その後、田中さんは母と話し合い、クレジットカードを整理しました。ネット通販の利用も見直し、支出状況を一緒に確認するようにしたのです。現在は毎週電話で連絡を取り、月に一度は帰省しています。
和子さんが受け取っている年金は月12万円程度です。浪費していなくても、手残りはほとんどなく、預金残高も元には戻りません。それでも新たな支出は大幅に減りました。
「母は浪費しているつもりじゃなかった、むしろ得していると思っていた。それがやっかいでしたね」
田中さんが見たのは、誰にでも起こり得る「得をしたい」という気持ちの延長線上にある現実でした。